銃? 知るか! 全員突撃だ!『七人のマッハ!!!!!!!』

 『マッハ!』に便乗して公開されたタイ映画。


 ゲリラ組織の将軍を大追撃の末に逮捕した刑事だが、相棒が犠牲になってしまう。休暇を取った彼は、スポーツ省のチャリティとして田舎の村に慰問にいく、テコンドー選手の妹について行くことに。歓迎されるアスリートたちだが、その村を突如ゲリラが襲う。村人を人質を取った彼らの目的は、将軍の釈放だった……!


 あらすじはだいたいこんな感じなんだが、最初に村が襲われるシーンで、容赦ない殺戮劇が繰り広げられる。いきなりの銃撃で村人が次々と射殺され……だいたい半分ぐらいまで減ってしまったんじゃないか?
 ハリウッドや日本の映画なら、せいぜい歯向かった一人が血祭りに上げられる程度で、あとは悪役のお情けで生かしておかれると思うんだが、この殺戮ぶりは凄い。そりゃあ、そんなに人質がたくさんいてもしようがないもんなあ。
 選手チームもみんな捕まるんだが、刑事は一人抜け出して、バンコクに狙いをつけた核爆弾の存在を知る。で、また捕まってしまうのだが、そこで人質の皆に語りかける。


「俺たちがやらなきゃ……!」


 人質の村人はまだ何十人も残っているんだが、数が多過ぎるからか縛られもせずに一カ所に固められてるんだよね。で、周囲を銃持った兵士が取り囲んでいる。
 いや、どう見ても絶望的な状況ですわね。抵抗しても多くの犠牲者が出る事は間違いない。こういう映画だと、老人や女の子もいるこの人質たちをどう救出するか、がポイントになるわけだが……。
 いやね……普通はそうなんだけど……


 なんと、人質が全員団結し、ゲリラたちに一斉に素手で殴りかかる!


 えええええええええ!? 慌てたゲリラたちは当然銃を乱射、いきなり何人もが撃ち殺されましたが……構わず、いやむしろ怒りに変えて突撃! 多少は元気かな?と思ってたジイさんが、ムエタイ仕込みの膝蹴りを炸裂! ビンタかまされてダウンした幼女も、テコンドー選手に助けられ、飛び膝蹴りで大反撃!


 常識に捕われている人間としては、「非戦闘員」という括りで彼らを捉えてしまっていたわけですが、違ったんですね。いや、ただの村人なら村人で、村の地形を利用するとかそういう「弱者の戦略」で主人公たちを助ければいいと思ったんですけど……いやあ、まさか全員で戦うとは。タイトルは七人のマッハなんですけど、実際は何十人も戦ってます! そしてゴミのようにやられていきます!
 いやあ……ある意味リアル……。この手の映画にありがちな「悪役が肝心なとこで手ぬるい」というご都合主義を排した、素晴らしき展開。


 そんな中でも主人公の刑事、村のやんちゃ男、そしてアスリート5人が大暴れ。


 しかし主人公の刑事と、その妹のテコンドー選手はまあわかる。格闘技の達人ですから。
 強烈タックルかますラグビーの選手も……うん、強いよね。
 が、サッカー選手(セパタクロー?)が、村の片足の男の作った藤のボールで戦う辺りからわけがわからなくなってくる。リフティングしてる場合かよ!
 そして新体操の選手……いや〜、ちょうど平行棒や鞍馬のようなものが、「たまたま」村に置いてあるんですよね。で、そこに飛び乗ってゲリラを蹴散らす……。
 最後の一人は……なんの選手かな? と思ってたら、村の小屋の屋根で大バウンドし、回転しながら空中から降ってくる……え……飛び込み……?


 もう突っ込みまくるしかないのだが、しかしそのアクションのあまりの危険さには感嘆の声が漏れっぱなし。いや……なぜ……飛び込みの選手が田舎の村でゲリラと戦う、というありえないシチュエーションを、こんなに命がけで作らなければならないのか? 突っ込みと衝撃が頭の中で渦を巻いて、言葉にならない!
 序盤のカーチェイスも信じられないような危ない事の連発で、何人か死んでないか心配になる。でも、生身の躍動感は群を抜いているよ。


 テロリスト占拠ものの文脈はきっちり押さえられているのだが、しかしクライマックスはやはりタイ映画らしい異質さをまとい、他にない感覚を生み出した。ハリウッドアクションに食傷気味な人は、ぜひ観て欲しい。

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