『MORSE』上下 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト

MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

MORSE〈下〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

MORSE〈下〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

 2010年ベスト1映画(暫定)『ぼくのエリ 200歳の少女』原作!
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100901/1283317628


 母子家庭で暮らす12歳のオスカーは、学校でもいじめに遭い、居場所のない日々を過ごしていた。ナイフを持ち歩き、夜には家の前の木を切りつけ、うさを晴らすのが日課。そんなある日、アパートの隣の部屋に、壮年の男に連れられた一人の少女が越してくる。少女の名はエリ。夜しか出歩かない謎めいた彼女に、いつしか惹かれていくオスカー。彼女と心を通わし、力を得たオスカーは、やがていじめをも跳ね返すようになる。だが、一見12歳の少女に見えるエリには、大きな秘密があった……。


 あらすじが映画版といっしょだけど、勘弁してくれ! 同じ話なんだからいいだろ!?


 スウェーデンのいわゆるニュータウンのような場所が舞台なのだが、その情景描写が読めるのは小説ならではの楽しみだ。スウェーデンとロシアの政治的問題や、国内での社会問題などもちょこちょこ挿入されている。大筋とはあまり関係ないんだが、なにせ馴染みの薄い国の話なので、興味深い。


 映画化にあたってかなり脚色が施されたと聞いていたが、なるほど、いくつかの要素がばっさりカットされているのがわかる。が、映画見て各種の情報を見て「がらっと設定を変えたのか?」と思ったところは、原作通りの解釈ですべての映画版のシーンも読み取り可能であった。映画版は観客の想像に委ねているところが多分にあり、そこも面白みの一つなのだが、原作を読むとより理解が深まるようになっている。
 オスカーの父親も映画の描写では「アル中」とは読み取りづらかったが、原作でも「未熟な人間」だから酒に走るという風に描写されていた。その「未熟さ」をさりげなく表現していた映画に対する、オレの解釈はおおむね正しかった……と言ってもいいかな。


 上下巻でそこそこボリュームはあるが、それほど濃密に書き込まれてもおらず、読みやすい部類。描写もどちらかと言うと読者の想像に委ねるタイプ。ここらあたり、映像化と相性が良かったのかもしれないな。
 しかしオレの大好きなクライマックスは……やっぱり最高! これは小説ならでは、という処理がされていて、やっぱり見せずに魅せるものだった。映画では気づかなかったが、考えて見ればこの描写は必須だったかと思わせる部分もあり。


 もっと違う印象を受けるかな、と思ったが、映画版を観た後だけにほぼ同じ手触りだった。いや、しかし素晴らしい。ぜひ次作も翻訳して欲しい作家だ。

Let the Right One in

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