『アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風』神林長平
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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フェアリィ星全域で展開される、ジャムの侵攻。それと時を同じくして、地球のリン・ジャクスンのもとへ一通の手紙が届く。それは、自らをジャムと一体化したと称するロンバート大佐による、ジャムからの人類への宣戦布告だった。
一方、フェアリィでは、零の駆る雪風と特殊戦による、ジャム機の捕獲作戦が始まろうとしていたが……。
「手紙」から幕を開け、珍しく複数の一人称で展開される冒頭が新鮮。クーリィ准将、ブッカー、エディスと「わたし」が次々と入れ替わる。途中、ブッカーがミステリも読むらしいことについてエディスが言及するシーンがあり、なにげなく読み流していたのだが、この辺りがまさか全てミステリ的に、トリックとは言わないまでも、裏の意味が潜んでいるとは……。
人間と機械、そしてジャムの意識の交換、それぞれの関係性というシリーズのテーマはより深く掘り下げられている。が、それらは難解にして平易。「雪風の世界認識」の下りなどが秀逸。そして、展開と描写、構成のすべてが、最初は意味の分からない哲学の羅列に見えたものが徐々にパズルのピースがはまるように組み合わさり、作品の全体像を明らかにしていく。
凄すぎる……完璧な構成だ……。
そしてクライマックスとエピローグにきっちり盛り込まれた、ビジュアル的な美しさときたら……もう……。前作に勝るとも劣らないエンディングの素晴らしさ。『アンブロークンアロー』というタイトルに込められた意味も最後の一行で明らかに!
ああ……涙が出るぜ。
しかし、かつてはナイーヴの代表格と言うべき存在だった主人公・深井零が、どんどん図太い性格になってきているのに、半ば呆れつつもつい拍手を送ってしまう。
ほわあ……感動だ……。
次作はまた十年後か? でも、今作で今度こそ本当に、これもまた「終わらない戦い」を描いた作品であることを実感した。このシリーズは著者のライフワークとして、永遠に続くのであろうか? それもまた良し、だ。
- 作者: 神林長平
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