『厭魅の如き憑くもの』三津田信三

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

 『十三の呪』があまり面白くなかったのだが、会社の上司が猛プッシュするのでこっちにもチャレンジ。


 とりあえず小説として力の入り方が違い過ぎて笑った。文章の密度も、ミステリとしての構成も、ホラーとしての描写も何もかも違いすぎるじゃないか。手抜きなものは読まずに、今後はこのシリーズだけ読もう。
 結構無理筋のトリックか?とも思ったが、かなり盲点を突かれた感覚。構成の中で大仕掛けもあって、考え抜かれてある。そのいくつもの視点の交差する構成は、いささか読みづらいんだけれども……ムニャムニャ。
 ただまあ、やはりやや衒学趣味的で、ここまで蘊蓄が必要か?と思ったのが残念なこと一つ目。で、探偵役の、別に「わたし」でええやんという個性のなさもつまらない。さらに、本格ミステリということでいささか気張り過ぎたか、排除されるあらゆる可能性を、探偵役他登場人物が延々と面白くもない議論をして全て並べ立てるのも、いささかうんざりした。排他的?な本格文壇に殴り込みをかけるには、これぐらい「全部考えてますよ」という予防線が必要なのかもしれないが……。もうちょっとはしょって、ちゃっちゃと書けそうなんだがなあ。探偵が犯人わかってないのに皆を集めて、見切り発車で謎解きってのも変だろ(笑)。


 しかし、それを抜きにしても豪快さと繊細さの光る、これぞミステリという一品。後の作品はもう少しこなれてくるかな?

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)