『悪夢探偵2』

 独自の映像センスと、松田龍平の陰気なイメージを完璧にマッチさせつつ、hitomiの桜島大根級の演技と無駄な生足、箍の外れた脇役陣の演技で映画全体をカオス化させ、自らのナルシス出演でその混沌にも止めを刺した塚本晋也監督の『悪夢探偵』。その続編がついに登場〜。

 いや〜、この監督、よくナルシシズム全開で主演してくれるんだが(出なきゃ面白いのに)、前作はクレジットに名前ないから出てないのかと思いきや、ラストに堂々の登場だからね。でも、幸い死んでくれたので(笑)、もう続編には出てくる心配はないのさ、わはははは。
 一作目『悪夢探偵』マイナス俳優塚本晋也・hitomiイコール……?

 
 主人公である影沼京一こと『悪夢探偵』の持つ悪夢の中に入る力の秘密、その出生と彼を悪夢に駆り立てる原動力に迫った今作のストーリーテリングは至極真っ当。息子・京一が生まれて後、あらゆる者に恐怖を感じるようになり、やがて息子の眼前で自殺した母親。そのトラウマを軸に、同じくあらゆる人に対して恐怖を覚え、悪夢の中で人を傷つけて行く少女との対峙と救済を対比させ、主人公自身が過去と向き合う姿を描く。


 『悪夢探偵』というキャラクターの成立が、昔のヒーローもののような子供の呼びかけであったのには驚いた。それをオープニングタイトルにつなげる演出が本当にヒーローもののようで、そしてさらにそれがクライマックスにつながって、本当に『悪夢探偵』がヒーローになる展開に結実する。いや、結局、過去は変えられないんだが、それも重要なテーマ。このシーンとメインテーマ曲だけでもうお腹いっぱいだ。


 それなりにまとまったホラー演出と、それなりに筋の通ったお話。母と子、家族の再生というテーマも、ラストシーンも悪くない。うーん、しかしなんか普通の映画になってて、ほっとしたようながっかりしたような……。