『履き忘れたもう片方の靴』『1303号室』大石圭

履き忘れたもう片方の靴 (河出文庫)

履き忘れたもう片方の靴 (河出文庫)

1303号室 (河出文庫)

1303号室 (河出文庫)

 共に文庫版。ハードカバーは持ってるんだが、前者は加筆訂正が加わり、両方とも新しい後書きがついているということで購入。


 美しい男娼が、ある男に買われ両性具有者の奴隷に改造される『履き忘れた……』は、作者のデビュー作であり、後の作品につながる多くの要素が詰まった佳品。


 『1303号室』は、ホラー文庫に籍を置きながらもストーカーや猟奇殺人者に題材を取る作品ばかり書いてきた作者が、初のオリジナルのオカルト物に手を染めた作品。作者特有の暴力的な描写と、悲観的な世界観、二つの恐怖の並立が鮮やかだ。ラストシーンのおぞましさが素晴らしい。