『地下牢の女王』大石圭
- 作者: 大石圭
- 出版社/メーカー: 光文社
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小説家の小林は、頻繁にメールを送って来るファン……一柳冴子の添付してきた彼女自身の写真に心惹かれるものを感じる。別れた妻子への慕情を残す彼は、次第に接近して来る冴子を遠ざけていたのだが、ある日、彼女の自宅へと足を踏み入れてしまう。だがそれは、女の恐るべき罠であった……!
連続殺人鬼が人を監禁して殺す……みたいな小説を書いてる作家が、ファンの女にとっ捕まって監禁されてしまう……ということで、この主人公は当然、大石圭本人がモデル!と断言して良かろう。
監禁された部屋の前で悠然と朝食を食うファンの女、こともあろうに「先生の小説で、監禁された女の人の前で主人公が中華食べるシーンがあったわよねえ。あれって残酷!」と代表作『殺人勤務医』を引き合いに出す! この女め、貴様を監禁してやりたい! と思ったところで気づくのだが、今回は「殺人鬼」役が日頃ぶち殺される側のキャラクターになっている。普段の作者=殺人鬼がやらかしてしまう構図とは逆転しているわけだ。主人公のはまってしまいそうな性的対象であるにも関わらず、性格最悪な女なのだが、この辺りはまさかの逆襲があるのかと思わせた『奴隷契約』の発展とも取れるね。
ひそかに「連続殺人鬼ものは人気あるけどもう書きたくない」「文学賞は取れないだろう」と本音をぶちかましながら、脱出を計る主人公。この辺りの攻防は、『飼育する男』などで脱出のサスペンスを描かない状況の「裏返し」なので、地下室という限定され切った舞台の中で脱出を可能かと思わせる要素があらかじめ潰されており、あまり盛り上がらない。いつもの感覚の対置として、読者としては「ああ、こんなことしても無駄なんだよね……」と諦めに近い形でそれを見守ることになる。逆ならば「もしかして脱出されてしまうかも?」とハラハラするのは、やはり何かうしろめたいからなのだろうか……。
ストーリーの興味は、終盤の大逆襲へと向かうのだが、ここで登場するのが「編集者」。この人にも実際のモデルがいるのだろうなあ、ウェブサイト作ってる人とか……。
しかし大石圭ファンとしては「いつもと逆だよ!」ということになるが、そうでない人には一周して普通のサスペンスとしても読めるのではないかな? 無理か?
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