2008/10/1 K-1 WORLD MAX 決勝トーナメント 試合感想

 うーむ、もしかしたら今年も見にいってたかもしれなかったものを……。
 そんなわけで、今日も地上派観戦です。

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スーパーファイト 3分3R延長1R
小比類巻太信(日本/BRAVI RAGAZZI/2004・2005優勝)
VS
ユーリ・メス(オランダ/ショータイム)

 あれっ、コヒさん放送あるんだ。
 プレッシャーをかけてパンチで仕掛けるメス。なるほど、重そう。コヒさんはくぐってかわすと素早く脇を差す。いや〜、さすがだね、この動き、青木真也も得意だけど、コヒさんは切れが違う。そのままテイクダウンしたいね……って、これはK-1なんで。

 いやあ……まるで成長していない……。

 改名も空白期間もどこへやら、クリンチ以外でまったくメスのパンチを殺せないコヒさん、膝空振りにジャブ合わせられてばったり。ほんとにジャブが全弾当たってるんじゃないかってぐらい、パンチが当たりまくっている。
 コヒさんが今日良かったところは、それでもまだローや膝を返して逆転を狙い続けたところか。が、時々距離があってもそれを維持できない。2ラウンドも滅多打ちで、判定は大差。
 メスもちょっと中盤以降、手数が落ちたが、ボディが効いたのか無理をしなかったのかはわからんなあ。
 3ラウンド終盤、メスは前蹴りで逃げ切り態勢。勝負を賭けてパンチで追いかけたコヒさん、しかし結果は無惨にもカウンターを浴びてノックアウト。
 ん〜、次につながる試合……とは言えんだろうなあ。相手はなんだかんだ言ってMAX初参戦、気持ちではなんとかつなげたが、技術的には伸びてなかったなあ。
 解説の甲高い声は前田憲作氏。ようやくまともな解説がきたが、ちょっと切なそうでした。武蔵はもうお役御免か?

 甲子園は割愛。でも空手兄妹は好きだ。HIROYAも勝負の厳しさを見せつけて、なかなか痛快でした。


K-1 WORLDMAX 2008 World Championship Tournamentリザーブファイト 3分3R延長1R
城戸康裕(谷山/2008日本王者)
VS
アルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ/2002世界王者)

 むっ、これも放送あるんだ。
 ローで散らして膝狙いの城戸だが、クラウスはプレッシャーが凄い。一ラウンド中盤から早くも余裕が出たか、ボディにもきつそうなのを叩き込む。城戸もペースを変えずにハイキックを返す。いや、これも凄い切れ味で、もう一枚落ちる選手ならばあれで一刀両断ではないか。しかし早くもきつそうな城戸、ゴングと同時ぐらいの膝で額をカットされる。うーん、クラウスもこれがもはや主力級の武器になってきたな。
 大流血ながらも次のラウンド。ここまでやはり実力差ありという印象だったが、ここで城戸が開き直ってラッシュ、パンチもヒットさせる。これこれ、この姿勢だよな。実力で負けててもいいんだよ、こうやって仕掛ければ形勢がひっくり返ることだってあるし、仕掛けないとなにも始まらないんだ。
 だが、クラウスがワンツーから膝につなげ、簡単に流れを取りかえす。城戸、膝対策なんてまったくしてなかっただろ……。自分の専売特許とでも思ってたか? 流血が激しくなり、ストップ。
 まあこんなもんだろ……ということで、別に価値を落とした試合ではない。今回は本当におまけで参戦できた試合だったわけだし、また来年出直せばいいだろう。


K-1 WORLDMAX 2008 World Championship Tournament準決勝戦 3分3R延長1R
魔裟斗(日本/シルバーウルフ/2003世界王者)
VS
佐藤嘉洋(日本/フルキャスト/名古屋JKファクトリー/2006・2007日本王者)

 うーん……いよいよだね……。
 1ラウンド、正面から飛び込む魔裟斗に、佐藤のボディへの膝が入る。これがタイミング良くて、並の選手だったらあっというまに腰がひけそうなんだが、魔裟斗は執拗に飛び込み続ける。が、佐藤は顔面に伸びてくる右ストレートも捌いて、強烈な打撃は入れさせない。ほぼ同じ内容のまま終了。

 2ラウンド、正面から仕掛ける佐藤。一瞬ひるむ魔裟斗だが、すぐに反撃を開始。ジャブが当たりはじめる。というか、ジャブが全弾当たりはじめた(笑)。なんなんだ? 佐藤の顔が何度ものけぞり、数発で鼻血が吹き出す。ちょっと左に回りながらうまく距離を調節して飛び込んでるからか、迎撃に出た佐藤の膝が空振りを繰り返す。当然、ローも蹴れず、佐藤は詰められて押し込まれる。このラウンドは魔裟斗
 強い。作戦がピタリとはまったか? 1ラウンドから飛び込むタイミングと間合いを計っていたのか……。

 そして最終ラウンド、これはこのままずるずると魔裟斗かと思ったのだが、詰めにいった魔裟斗の顔面に佐藤のフックが直撃! ぐらついたところにローをフォローし、なおも襲いかかる佐藤! 魔裟斗も打ち返すが一発効いたところに、佐藤がうまく回転のいいフックをねじ込んでくる! 
 ……一年前、誰が予想したろうか? 魔裟斗と佐藤がパンチで打ち合い続ける光景を……そして今日最も衝撃的なシーン……打ち勝ったのは佐藤! 左フック、右ストレートとまともにもらった魔裟斗が尻餅をつく! 動いた……またも歴史が動いた! 二番手の男の執念が、ついにカリスマを打ち砕いた!
 しかし、木っ端みじんに砕かれたプライドの欠片だけを拾い上げ、男は立ち上がる。明らかにダメージのある足取りで……泥にまみれたはずの男は、勝利を求めて食い下がる。
 ここで距離を取れば……前蹴りで突き放していれば……だが、名もなき海外のリングで修羅場をくぐり続けてきた男もまた、誰にも賞賛されることのなかったその誇りを胸に抱いて、なおも打ち合いに挑む。一気に決着をつける、日陰にいた自分が、あと一撃で日の当たる頂点へと躍り出るのだ。
 わずかな差で佐藤のパンチは空を切り、魔裟斗の有効打が増え佐藤をクリンチに追い込む。

 勝負は判定。ここは佐藤かと思ったのだが、支持は一者で延長。デジタル的にルールを適用すれば、別にうなずけない判定じゃないわけよ。しかし、ここ数年「9ー8」をつけたラウンドが、K-1の全試合通していったいどれだけあったかな? そういう採点があり得るというのは理屈としては理解できるが、判例らしき判例のないもんを、これ幸いと適用した感がいささか否めないねえ。そういう試合展開がなかったと言われればそれまでだが。

 息を吹き返した魔裟斗が、延長も前に出る。驚くべきことに佐藤陣営も左のパンチで倒せの指示。まじで〜みんなもっと冷静になろうよ(笑)。ここでスタミナの差が出たか、じわじわと魔裟斗が出る。
 延長判定は魔裟斗。まあこのラウンドはやや取っていたか。

 内容的には魔裟斗の負けに等しく、ポイントゲームで勝ったに過ぎない。佐藤の株は大きくあがった感じ。しかしそれでも、魔裟斗という人間の底知れない執念を見せつけられた試合だったなあ。


K-1 WORLDMAX 2008 World Championship Tournament準決勝戦 3分3R延長1R
アンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング オランダ/2005・2007世界王者)
VS
アルトゥール・キシェンコウクライナ/キャプテンオデッサ/2007世界3位)

 まさかのダイジェスト、3ラウンド後半から。しかし……その時間帯なのにキシェンコがローの効いた様子もないよ。どうなってんだ?
 果たして綺麗なストレートをねじ込み、サワーに正面突破を許さない。ブロックして棒立ちになるシーンがあるんだが、なぜかサワーがそこで飛び込むのをためらう……。いや、事実飛び込むと強烈な左フックが飛び込み際、打ち終わりに襲いかかってくる。
 コーナーに詰められても、何もしてないのにサワーを下がらせ脱出してしまう。なんなんだこいつ……やっぱり天才だったのか? うますぎるんですけど……。
 延長に突入するも、サワーがまったくいつものラッシュを出せない。キシェンコは守りも堅く一切バランスを崩さず、着実に攻撃を返す。口開いてるのにスタミナも切れてないし……。
 判定に突入で……なんとキシェンコ! 延長ラウンドならではの微差で、わずかな手数だけで取ったか。まさかの前王者陥落! まあサワーにしてみれば、圧倒しなければならない試合でそれができなかった時点で、勝負論としては負けといっていいだろう。


K-1 WORLDMAX 2008 World Championship Tournament決勝戦
魔裟斗
VS
キシェンコ

 いやあ……ありえない顔合わせになったなあ。しかもどちらも延長ラウンドまでやって、魔裟斗は顔もボコボコ。幸か不幸か、ローを思ったほど蹴られてないのが救いか。キシェンコは逆にローはちょっともらってるか?
 「ボクシングならオレがサワーより上」と言い切っていたキシェンコ、手長猿のような腕を綺麗に折り畳んでのフック、アッパー、ストレートで何度も魔裟斗をぐらつかせる。右ローも決まり、魔裟斗は苦しいか……? しかし1ラウンド終盤、距離を合わせた魔裟斗、このローに空を切らせ続け、自らは飛び込む間合いをつかむ。ここらへんが絶妙……。今日の死闘の連続を制したのは、実はこの距離感ではなかったか?
 だが、一度勝っている魔裟斗優勢かと思われた第2ラウンド、かつてKO決着を見せた第2ラウンド、勝負を決めにかかった魔裟斗の顔面にキシェンコの左フックが直撃! 肉体がスイッチを押されたように停止し、一瞬、棒立ちになった魔裟斗の顔面に、キシェンコの右ストレートが叩き込まれる! ああ……やっぱりこのイケメンは怪物だったんだ……。だが、たぶんこのダウンを喫した時の魔裟斗はおそらく「またかよ、かっこわりい」ぐらいに思ってたんじゃないかな?
 再び襲いかかる魔裟斗……キシェンコも勇躍して打ち合いに臨み、ローのダメージにも耐えて踏んばり続ける。あと一撃、あと一撃で魔裟斗の精神の糸さえも断ち切ることができる。だが、決まらない。昨年のお株を奪うような、もはや完全に自らのフィニッシュブローとした左フックが幾度もめり込むのだが、魔裟斗は止まらない。

 3ラウンド……そして延長……永劫とも感じられる打ち合いが続く。今日、二度もケツをマットにつけた男は何もかもかなぐり捨てて前に出続け、若きファイターも秀麗な相貌を鮮血で染めて迎え撃つ。誰だろう、この青年の心が弱いなんて言ったのは? そんなことをいう人間は、もう誰もいないだろう。

 延長判定を制したのは魔裟斗
 しかし、またも勝負に負けて試合に勝った印象は否めない。だが、王者として勝負に完敗しても、なお選手として試合の勝利をもぎ取らせた執念……やはりこの男が一つの時代を獲ったことは、必然だったのだ。佐藤が魔裟斗を一選手としてしか見ていない、と言っていたが、誰よりも魔裟斗自身が99%の努力で持って走り続け、常に一選手、チャレンジャーとして守りに入らなかったことが今回の優勝につながったのではないかと思う。

 いや〜、信じられない死闘の連続だったなあ。気違いじみていた。だが、これが魔裟斗時代の最後の輝きになることも想像に難くなく、MAXの勢力図は佐藤とキシェンコが大きく躍進。
 優勝したのは、魔裟斗だった。だが、今日の二人の「勝利者」によって、時代は確かに変わったのだ。

 2009年……この図式がさらにどう動くか? 今から楽しみだ。

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