2009/10/26 K-1WORLDMAX2009決勝 試合感想 前編

 ふ〜、いよいよこの日がやってきましたね〜。魔裟斗なき後のMAXを占う、重要な大会です。
 ラインナップは「魔裟斗以外」とでもいうべき、オールキャスト。トーナメント以外のワンマッチ出場者も、負ければ来年の扱いはどうなるかわからない、リスクのかかった一戦になりますな。

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▼第1試合 スーパーファイト K-1ルール 3分3R延長1R
長島☆自演乙☆雄一郎(魁塾/NJKFスーパーウェルター級王者)
VS
シュー・イェン(北京盛華国際武術クラブ/2005年中国山東省散打選手権70kg級王者)

 さて、撫で肩、筋肉の見えない身体から練習不足も疑われた自演乙、シルバーウルフに出稽古してきたそうだが、実力は上がっているのか? 初参戦の同じアジア人相手とあっては、敗北は許されないが……。

 あれ〜、しかしいきなりラッシュにコンパクトなフックを引っ掛けられて横転! 立ち上がるも、何かホールド気味に腕が絡まったところでさらに細かいフックが連打され……なんだこりゃ、散打のテクニックか?(笑) もうダメージはありありで、精神的ショックまで顔に出ている。
 シューはもう蹴りを打つまでもなく、さらに回転を上げて自演乙を叩きのめした。

 んん〜、意気込みが先走り過ぎた最悪の典型例……。やっぱりコスプレしてるオタクはチャラチャラしてるだけで弱い、という言われなき偏見を助長するではないか。ダメージも溜まってそうだし、NJKFもキャンセルして、来年2月までみっちり練習すべきじゃないかな。次が本当に最後のチャンスだ。


▼第5試合 スーパーファイト K-1ルール 62kg契約 3分3R延長1R
渡辺一久(フリー/元プロボクシング日本フェザー級王者)
VS
チョン・ジェヒ(韓国/Busan Taesan/韓国ムエタイジュニアライト級王者)


 突進し、強打で仕掛ける渡辺。ロー、ミドル、膝でセオリー通りに対抗するジェヒ。左のインローが走ってる。ジェヒはストレートに対する反応も良くて、ちょっと頭を下げるんだが、蹴りのオプションがない渡辺は飛び込んだら組んでしまう。仕切り直しては蹴り、の繰り返しで、渡辺は徐々に失速。
 ジェヒは非常に冷静で、渡辺がパフォーマンスしてる間も、距離を調整してしまって休んでいる。ん〜、渡辺は変な動きするならするで、その間に詰めるなり回るなりしないと……今のパフォーマンスじゃ、単なる虚勢にしかなってない。
 2ラウンド、ローを蹴った時に膝に当たったか、ジェヒはちょい足を痛めた感じ。それでもミドルを蹴り、勢いの落ちた渡辺のパンチにも踏ん張り続ける。渡辺も必死にチャンスをうかがい、時折ワンツーやフックを当てるのだが、ジェヒは倒れず。
 判定は割れたが、ジェヒがスプリットで勝利。まあK-1基準だから渡辺も一つ取れるけど、内容的にはコントロール仕切ったジェヒの勝利は堅いところだったか。

 渡辺も、空回りはしなかったが、やはり現時点での実力がこんな程度。蹴りが使えない相手なら強心臓で飲み込めるだろうが、今のスタイルでは厳しい。それでもこれで大晦日の目は残ったかな。


▼第4試合 世界トーナメント リザーブファイト 3分3R延長1R
佐藤嘉洋フルキャスト/名古屋JKファクトリー/2006&2007年日本優勝)

VS
城戸康裕(谷山/2008年日本優勝)


 おっ、これ放送するんだ。佐藤は、ちょっと上体小さくなったか? スタミナ重視に変えて来た?
 淡々と詰める佐藤に、城戸は左ジャブ、左フックを合わせる。左ジャブで額を叩いて頭を上げさせ、グローブが前に出てる佐藤のガードの隙間を突いて左フックを当てる作戦か。さらに、ミドルとロー。佐藤はしかし動じた様子もなく、右ローを狙い続ける。
 ヒット数こそ城戸で、相当考えて来た作戦だと思うんだが、佐藤は全然ペースを変えていない。最初から長丁場を狙ってるか。
 2ラウンド、プレッシャーを強めた佐藤が、右ローからボディストレート、右フック……城戸の動きをじわじわと止めて、優勢に。城戸は手も足も止まって来た……。やはり実力の差は歴然か、と思えたところで、佐藤が右ストレートを綺麗に打ち抜きダウンを奪う。城戸は長身の割にはリーチもも一つだし、ストレート系のパンチも伸びないしな。さあ、トーナメントルールだし、あとは佐藤が決めるだけ、と思ったら、なんと城戸のフックで佐藤が前のめりに!
 こうなると、必死の笑顔で耐えて来た城戸より、佐藤が無表情を装いつつも内心焦ってるように見えるから不思議だ。
 決着を狙って打ち合う両者……だが、こうなればストレートが主武器の佐藤有利、打ち抜いて決めた。

 あ〜笑った笑った、佐藤はさぞ冷や汗をかいたことだろう。彼の哲学としては、冷静に淡々と決めてこそで、パンチャーでもない相手にダウンを取り返されたというのは、勝ったからいいものの相当な屈辱だと思うよ。
 城戸も実力差は見せつけられたものの、やっぱり何か持っている選手。来年、またチャンスは残った。


▼第6試合 スーパーファイト 武田幸三引退試合 K-1ルール 3分3R延長1R
武田幸三治政館/元ラジャダムナンスタジアム認定ウェルター級王者)

VS
アルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ/2002年世界王者)


 K-1MAXにおける武田幸三の歴史は、ダウンと被KOの歴史だった。初年の日本トーナメントこそ準優勝したものの、推薦で臨んだ決勝トーナメントでは、与し易いと思われた総合格闘家ラドウィックに顎を打ち抜かれ失神。代名詞となるガラスの顎の片鱗を早くも見せつけた。翌年の日本トーナメントでは、オガケンに滅多打ちにされアッパー、コヒさんの飛び膝に吹き飛ばされ、「下からの攻撃にもろい」という弱点を露呈。続くワンマッチでは当時はパンチのイメージなどまるでなかったブアカーオのパンチに二度もダウン。2005年はローで優勢に進めながら、アンディ・サワーのラッシュに粉砕。ホームリング新日本で、誰も聞いたこともないような選手に勝利を積み重ねる中、お茶の間には小首を傾げた不自然な姿勢と、超合筋という異名とは裏腹な脆さばかりがさらされるようになった。

 「漢」「サムライ」「遺書」……威勢のいい文句とは裏腹に、何度「殺されて」も、彼はMAXのリングに現れ続けた。ただそのキャラクターだけを売りにして。
 結局、宮田しか倒せなかったロー、空を切り続けた右カウンター……。ゾンビのようにリングにしがみ続けてきた彼についに引退を決意させたのは、立ち技素人だった。大晦日の川尻戦、全ての弱点をついた作戦にはめられ、見せ場なく惨敗。

 最後の相手は、初代王者クラウス。近年、再び評価を上げて来た強豪だ。
 開始早々から、小さなパンチが当たるが、そこまでのローが走っていたこともあって、クラウスの踏み込みがやや浅い。武田は踏ん張り続け、ローを蹴り続ける。だが、距離が合わないから出し始めたクラウスのローが効いてしまう。左の小さなパンチが効いていたのか、クラウスの振り下ろすようなローキックが完全に効いてしまう。
 顎だけではなかった。もはや、超合筋はボロボロだったのだ。力なくローキックをもらい続け、倒れる武田。もう彼はとっくに終わっていた……だが、クラウスのフックに右目を押さえて力なく座り込んだ武田の姿を見てもなお、角田は試合を止めない。そう、角田という芸能人は、ちゃんとわかっているのだ。武田幸三をこのリングに上がらせた続けたものは、その競技的な強さではなく、見た目から連想される「漢」「サムライ」というキャラであることを。足が痛かろうが、目が見えなかろうが、彼はそのキャラを全うし「殺される」までリングで立ち続けなければならないのだ。これはそういう「ショー」なんだから。
 最後は顎をぶち砕かれて壮絶KOになるかと思ったが、寸前でストップ。あ、そうか、この後はマイクやら花束贈呈やら、そういうプログラムがまだ残ってたんだっけ。

 ボロボロになっても己に与えられた役割を全うし続け、「ショー」を完遂し続けた武田幸三。彼こそが、真のプロフェッショナルであった。とりあえず、死人が出なくて良かったよ。

 トーナメントはまた明日以降。

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