『世界の中心で愛をさけぶ』ディレクターズカット

世界の中心で、愛をさけぶ スタンダード・エディション [DVD]

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世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

 魂の拳を交える事を至上の喜びとする格闘技ファンならば「ケッ!」と吐き捨てることは間違いない、昨年大ヒットした恋愛もの映画『世界の中心で愛をさけぶ』。だが、この作品の封印されたディレクターズカット版のクライマックスは、まさに想像を絶する内容だったのだ。

 ざっとストーリーを説明すると、難病で死んだ高校時代の恋人アキを思い続ける男サクが、彼女との「一緒に世界の中心へ行く」という約束を果たすため、現在の恋人律子とともに、オーストラリアへ行くのである。アボリジニの聖地であるそこで、アキの遺灰をまき、サクは新たな人生を歩む事を決意する……。


 劇場公開版ではスンナリと灰をまいて終わるのだが、ディレクターズカット版は大変である。


 そもそも世界の中心と言われるそこは、現地のアボリジニの聖地。当然観光地でもなんでもなく、本来よそ者は入ってはいけないはずなのだ。目的地にたどりついたサク(大沢たかお)と律子(柴咲コウ)を、筋骨たくましい男が出迎え、こう言う。


「おまえたちの来る事は、精霊に聴いて知っていた。だが、この地によそものを入れるわけにはいかん」


 その男は、アボリジニの中でも勇者と呼ばれる人物であり、その聖地の門番役を務める者だった。そしてこの役を演ずるのが、アボリジニでもなんでもないが一応オセアニア出身ということで、なんとレイ・セフォーなのである!
 『セカチュー』は製作をフジテレビが全面バックアップしていたが、その縁もあっての特別出演。この後にはドン・フライ、グッドリッジと共に『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』にも出演している。


「オレは……どうしても、アキとの約束を果たさなきゃいけないんだ!」


 叫ぶサク。アボリジニの勇者はこう言った。


「どうしても通りたくば……私を倒してから行くがいい」


 ファイティングポーズを取るセフォー大沢たかおは決死の表情で上着を脱ぎ捨てる。サクの必死の攻撃をかわし、アボリジニの勇者のブーメラン・フック! ふらつきながらも耐えるサク。
 律子は涙ながらにそれを見守る。本当は制止したいが、彼は律子のために戦っているわけではなく、自分には止める権利がない……。
 ブーメラン・フックの連発を辛うじて防いだサクは、ついに渾身のワンツーをヒットさせる。一瞬後退したアボリジニの勇者は、しかしニヤリと笑って自らノーガードに! サクが打って出て来たところに、だらりと下げた手からアッパーを突き上げる!
 一撃で倒されたサクは起き上がれない。しかし、ここまでか……と思われたその時、渾身の力を振り絞って立ち上がる。足下はふらつき、拳も上がらない。もはや戦う力は残っていないことは明白。
 が、とどめを刺すかと思われたアボリジニの勇者は、突然拳を引く。


「精霊が、おまえの勇気を認めた」


 律子に支えられ、世界の中心へと足を踏み入れるサク。アキの遺灰の入った瓶を取り出すのだが……サクはその瓶を取り落とす。はっとなる律子。


 その時、灰をまくはずのサクは、すでに自らが、真っ白な灰になって燃え尽きていたのだった……。


「サクーーーーーーっ!!!!」


 いやあ、ものすごい内容でした。いつかDVDがリリースされたら、セフォーファンは間違いなく買いですね。