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”故郷を目指して”『LION』


『LION/ライオン ~25年目のただいま~』予告編

 グーグルアースで故郷を探せ!

 オーストラリアで暮らす青年、サルーの過去。それは5歳の時に生まれたインドで迷子となって家族と離れ離れになり、生き別れのまま養子に出されたことだった。二十数年を経て、母と兄を探すため、サルーはわずかな記憶を頼りに故郷を探し始める……。

 実話ベースのお話ですが、いきなり「これは真実の物語」としちゃう戸田奈津子字幕。まあ全てが本当というわけではなく、映画化ならではの脚色もされています。

 前情報ではこのグーグルアース話にスポットが当たっていて、大人になってから過去回想を交えつつ進める構成かな、と想像していたのだが、割合直球に子供時代から始まる。兄ちゃんの仕事について行くが、駅ではぐれ、電車に乗ってしまい数日閉じ込められたまま揺られて遥か彼方に……ついた先は言葉も通じない!

 いやあ、インドは広いね……。そして、お供え物を食べて食いつなぐ少年に迫る、子供さらいの魔の手……。浮浪児を直接さらってくような暴力的なのから、世話しながら言葉巧みに騙して売り飛ばすような陰湿なものまで様々。主人公サルー君は危機察知能力が高く、これを回避し続け、やっとこさまともな人に拾ってもらえることに。しかし施設に入ったら入ったでそこもきな臭く、夜中に連れ出される男の子を目撃……。まあ大人が見りゃもろに虐待だ、とわかるわけだが、子供目線だと何だかわからないけれどとにかく危険なことが起きている、ぐらいの感じか?

 そしてついに運命の出会いが訪れ、タスマニアから来た夫婦に里子として引き取られることに……。この母親役が二コール・キッドマン。近年では初めて若作りせずに役を演じた、ということ。登場時の30歳前後とサルー少年の成長後の50代を大差なくやっているため、やっぱり時空が歪んでる感じはしたんだが……。
 少年と里親夫婦の対面時、サルー君はタスマニアと書いたTシャツを着せられてて、アピールが激しいなインド人! 自重してくれ!と思ったが、これも実話なのな。

 そして25年、何不自由なく成長したサルーだが、同じ境遇で後から里子として迎え入れられた義弟のマントッシュ君は、家を出て立派なヤク中になってしまっていた……。インドで虐待を受け、自傷癖を持って育ってしまったマントッシュ君の不幸さを見るにつけ、サルーは自分とのギャップを感じ、逆に幸せである自分に罪悪感を抱く……。
 インド料理パーティで、かつて故郷で兄にねだった焼き菓子を発見し、望郷の思いは募る。記憶の中の兄映像がやたらとフラッシュバックするトラウマ映像表現が少々くどい感じで、実際はもうちょっと落ち着いた感じだったのでは、と想像。ただまあ、ほとんど忘れてたけど興味本位で始めたら引っ込みがつかなくなった、ぐらいの動機だったとしても、それでは映画にならんからこういう描き方になるかな。

 ガールフレンド役にはルーニー・マーラ。登場時の無駄な可愛さ、ベッドシーン、喧嘩したり一緒に感動してくれたり……こりゃ一体なんなんだ? という感じだが、感情移入させるための装置であろうか……。ルーニーも自分の役に大して意味がないことがわかっているのか、開き直ってひたすら可愛くやっているような。

 時系列通りに丁寧にお話を追っているので、グーグルアースで故郷を探す部分のテクニカルさはさしたる分量もなく、ちょっとあっさりしている。が、終盤になって序盤の丁寧な描写がようやく効いて来て、サルーの少年時代を追体験したことで、彼が記憶を辿る過程にうまくシンクロできるようになってくる。そして、訪れる感動のラスト……!

 例によって、エンドロールの実際の映像や写真の方が感動するのだが、まあそれも含めて実話ベース映画ということで。サルーはいいとして、マントッシュ君は立ち直れたのであろうか、と心配になってしまうのだが……。