"栄光はどこにある"『Re:LIFE』


 ヒュー・グラント主演作!


 アカデミー賞脚本家キース・マイケルズだが、その後15年、ヒット作に恵まれず、ついに脚本の仕事は来なくなり、家の電気も止められてしまった。エージェントのコネで田舎町の大学にシナリオ学の講師として潜り込むことに成功するが、そもそも望まぬ仕事なのでやる気なし。過去の栄光にあぐらをかいて好き勝手をしていたのだが……。


 かつてはスターとして名声を欲しいままにした脚本家が、今はうらぶれているものの、新たな仲間の助けで再出発を果たそうとする……という、ドリュー・バリモアと共演した『ラブソングができるまで』とほぼ同じ話。って、監督まで一緒だったよ!


 受賞後は凡作を連発し、仕事がなくなり、全然やる気がないまま田舎の大学の講師の仕事に流れ着くが、田舎でも辛うじて名声は生きていて、早速地元の女子大生とベッドイン! これは……『愛のタリオ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150216/1424086289)と同じ展開……?
 もちろんドロドロの韓国映画とは全然路線が違って、こっちの女子大生はドライなのであるが、その代わりに規則が厳しい! 初日から酔っ払って失言を連発し、フェミニストの教授を怒らせたヒュー・グラント、ハリウッド式と言うかショービズ界のいい加減さに染まりすぎていて、社会常識がやばいレベル。J・K・シモンズ学長は元海兵隊だが、妻と娘三人に囲まれた家庭を持っていて、そんな彼にもまあまあ同情的。いや、これはうらぶれても可愛げのあるヒュー・グラントだから、何かとモテたり助けたりしてもらえるわけで、何もない普通のオッサンだったらただの嫌な奴で終わりだから、そこらへん勘違いしないように。


 脚本クラスを受ける学生は女子をルックスだけで選び、残りの男子二名はいかにもなオタクをチョイス! 強引に受けたいと言ってきたシングルマザー学生マリサ・トメイを加えて、授業を始めるが早速自習。まあこんなことを続けていると当然クビの危機が迫る……。


 いろいろな人に諭されたことを受けて、やっとこさ真面目にやり出したヒュー・グラント、いつしか教える喜び、真摯に学生たちと向き合うこと、同僚や上司との付き合い方を、少しずつ修正していく。環境を変え、新しい自分に向き合うことで、新境地を見出す……とまあ話自体はよくあるものだが、映画ネタ、文芸ネタを大量にぶち込んで飽きさせない。脚本の話で脚本が破綻してたらシャレにならないところだったが、背景にとどまるかと思われた学生一人一人の話も拾って過不足なくまとめてくる。もちろんかなり戯画化されてる感もあり、メガネ女学生の父親との関係とかベタで苦しい感じもあるが、まあそこは構造勝負のハリウッド映画だからな。
 『スターウォーズ』オタクで、何の脚本を書いてもスターウォーズにしかならない奴とか、こりゃあどうにもならんだろ……と思うが、まあ書き上げた脚本はさて置き、このキャラのいい味や人間味をさらっとすくい上げるあたりもよし。そして、英語圏の女子において男子の『スター・ウォーズ』に対置されるのは、『ダーティ・ダンシング』なんだな……初めて知ったわ……。


 そうした人との新たな関わりの中でしか、優れた脚本は生まれないのだと示唆し、再生を匂わせたところでエンディングを迎えるあたりも、程よく品がよくていいですね。大ブレイクはないかもしれないが、まだ未来はわからない。誰にとってもまだ人生はこれから……。

ラブソングができるまで (字幕版)

ラブソングができるまで (字幕版)

愛のタリオ

愛のタリオ