"ワルにはお仕置きだ"『バトルフロント』


 ジェイソン・ステイサム主演作!


 麻薬潜入捜査官だったブローカーは、ある事件をきっかけに一線を退き、娘と二人で、亡き妻の故郷へとやってきた。穏やかな暮らしを求めるブローカーだったが、地元になじめないうちに、娘が学校で同級生を殴ると言う事件が起き……。


 ステイサム主演作、どうも観る前からどれもいっしょに見えて、ここ数年、全然観ていなかったのだが、ジェームズ・フランコも出てるしな、ということで久々に行ってきました。


 麻薬の売人、と見せかけて潜入捜査官だったステイサムだが、人死にに嫌気がさしてインターポールを退職。娘と共にド田舎に引っ越すのだが、そこで娘が自分の教えた護身術で、いじめ野郎のクラスメートのデブをKOしたせいで、そのモンスターペアレンツに絡まれる……。
 おお……なんだ、このスケールの小さい話は……。脚本もスタローンがステイサムのために書いたということ。『ランボー5』のアイディアの一つだったという噂も聞いたが、この話をランボーでやったらファンが暴動起こしたと思うよ。まあランボーに娘はいないし、単なる噂だろう。
 しかしスタさんらしく仕事は丁寧で、田舎の閉鎖的な人間関係や、モンスターペアレンツ側のキャラクターなどもしっかり描き込んでいる。発端はほんとにガキの喧嘩から始まる小さな話なのだが、その仕返しが徐々にエスカレートして大事になり、やりすぎたと思った時は止まらなくなり、全ての人を破滅へと巻き込む、という雪だるま式の悲劇としての作劇にちゃんとなっている。
 が、結局、最後にはステイサムが全てを成敗して一件落着になるお話なんだから、モンペとの仲直りの話やら、ヤク中一家の悲哀やらをこう真面目に描く必要があるのであろうか。おかげでアクション一辺倒ではなくなり、まずまずドラマ性のあるお話になっているが、その分、アクション映画らしい馬鹿馬鹿しさは薄れ、普通の話に着地しているといういつものスタさん脚本。ついでに言うと、アクション自体はチャカチャカ編集で観にくいことこの上ないのだが、トータルの分量が少なめなので気にならないという、そこはかとない本末転倒ぶり。スケールの小ささゆえにかえって破綻が覆い隠された小品となっているのであった。


 モンペ母がケイト・ボスワースで、娼婦にして売人にしてジェームズ・フランコの愛人役がウィノナ・ライダー。共にヤク中で、南部の女らしくショーパンに薄着なあたりキャラがかぶっているので、この二人はいっそのことまとめちゃった方が良かったのではないか。一時期は超大作のヒロインも務めた人たちだが、今やこのポジションかと思うといささか悲しい。女優って、ほんとに不遇だなあ。


 モンペ母の兄で、ステイサムをしめるように頼まれるのがジェームズ・フランコ。この人が地元の警察と癒着してヤクを作っている人なのだが、子供には手を出さず、妹のヤク中もたしなめる、色々と矛盾も抱えたキャラになっているのだな。しかしまあ欲をかいたばかりに、今まで保っていた危ういバランスを崩し、破滅へとひた走っていく。が、この辺りも破滅と言うよりはステイサムの鉄拳制裁だから、まあ呑気なものであります。


 最近のスタさんの考える男の道、強くなければいけないけどあまり一般人相手に暴力には訴えるな、家庭人として地元の人とも仲良くしろ、ワルにはお仕置きしてやれ、などなど殺しまくりの暴虐アクションとはちょっと距離を置いた人生哲学が仄見え、それをステイサムに伝承したいのかな、と思わせる。麻薬工場を人を巻き込まないように爆破する仕掛けなどがその象徴ですね。たぶんスタさん自ら主役をやると説教くさくなって、それがまた味になったと思うのだが、ステイサムではそういうテイストが出ない分、なんとなく薄味なようでもあり、なかなかバランスって難しいな、と考えたのでありました。

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