読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

”ピンチはチャンス!?”『カリフォルニア・ダウン』

映画


 ロック様主演作!


 サンアンドレアス断層の突如のずれによって、巨大地震カリフォルニアを襲った。見る見る内に破壊されていく大都市群。レスキュー隊のパイロットであるレイは救助活動に出た矢先、離婚を控えた妻子が今まさに危機に陥っていることを知り、助けに向かうのだが……。


 大地震、ダム崩壊、大津波ものということで、近年、常に公開延期のリスクを孕んでるジャンルの映画。今作も一時期フワフワと浮いていたが、無事に公開となりました。


 主演はドウェイン・ジョンソン。離婚を間近に控えたレスキュー隊員。冒頭からわけのわからない落ち方をして崖に上手い具合に引っかかった自動車を、デモンストレーション代わりにアクロバティックに救出! プロフェッショナルの実力を見せつける。こんなマニュアルに絶対載ってない事態が起こっても、オレの冷静な判断力と溢れる行動力ならどうってことないよ、というロック様の自己顕示欲が光る。
 が、家に帰ると離婚届の用紙が郵送されており、娘を大学に送るために迎えに行った先で、妻が新しい恋人である元Mr.ファンタスティックとの同居を告げられて大ショック。
 驚いたと同時に、事前に伝えてもらえなかった扱いの悪さにイラッとしてるんだけれど、懸命にそれを押し隠して祝福してみせるロック様、男らしい! で、妻は彼が内心ショックなのに気づいてフォローを入れようとするんだけれど、やっぱりイラッときているロック様、ここはさすがに冷たくしてしまう。もうどうせ別れる女に気を使われることの屈辱、そんなイライラを宥められず、大人になり切れない自分へのもどかしさ……なんという名演だ!


 その裏には、かつて水の事故によって目の前で次女を失ったトラウマがあるのだな。自分を責め、妻や長女にも責められているように感じ、逃げ場は仕事しかないのだけれど、それすらも「レスキュー隊員のくせに助けられなかった」という負い目につながる。八方塞がりなんだけれど、精神的にもタフすぎるので自分だけで抱え込んでしまい、オレだけが傷つけばそれでいいのさ、となってしまうマッチョなナルシス男……なんという完璧な演技だ!
 で、こういう単純かつ複雑な心理を、妻は全然理解できない、言われなきゃわからないのである。当たり前だ! 本人は責めてる意識とか(一時期あったとしても)もうないし、何にも言わずに一人で抱え込んで、もうおまえは必要ない、と言われてるように感じてしまうのだ……。


 妹と自分のペンダント二本つけて、すでに自分の明るい未来にまっしぐらな長女は完全に立ち直っていて、「離婚? ん〜、いやだけどまあしゃあないね。二人の問題だし……」と割合ドライ。そんな折に突如、大地震が起こって、助け合う中でバラバラになる寸前だった家族の絆が再生へと向かうのであった……。


 たまたま(自分で無茶な操縦して不調の)ヘリの修理のために空を飛んでたロック様は直撃を免れ、元Mr.ファンタスティックの会社に遊びに行っていた娘と、元Mr.ファンタスティックの妹と飯を食っていた妻を助けに向かう。元Mr.ファンタスティックは、車の中に閉じ込められたロック様の娘を見捨てて逃げ出すし、その妹は「えっ、あんたバツイチで子持ちでしょ?」とあてこすっきて、うわあ、この結婚考え直した方がいいんじゃないの、と思わせた直後に墜落死!


 いやあ、元Mr.ファンタスティックことヨアン・グリフィズ、扱い悪いな。顔が鋭利で冷たい感じがちょっとあるせいか、人情味のない金持ち役が板についている。いや、今作は別に普通の人だったと思うのだよね。婚約者の娘ともなんとか仲良くなろうとしてたし、未曾有の大災害を前に、誰もが吹かれるかもしれない臆病風に吹かれてしまった。訓練受けてるわけじゃないし、当然じゃないか。せっかくアメコミヒーローだったのに、ロック様の引き立て役にされて可哀想。金持ちの独身男は、いざという時に義理の娘なんて守らないモヤシ野郎である、という古き良き時代の価値観の犠牲になったのだ、彼は……。後悔して許されるような展開もなく、罵られた挙句に圧死ということで、すっかりマッチョ様の引き立て役になってしまった。


 とんでもない大地震だが、まあ家族の再生を促すためのアトラクションのようで、後半はさすがにだれてきた。ポール・ジアマッティ博士の地震予知のパートがロック様パートとリンクしないので、なおさら家族愛話に。まあレスキューの仕事をほっぽらかして家族を助けに行くのがむしろ積極的に奨励される価値観は是としたいところであるが。
 まあこうしてくどくどと書いてきたが、要はCGの大災害のスペクタクルを楽しく眺める映画なので、大画面と大音響さえあればそれで充分でもある。被災地での略奪やら、最後の復興の誓いやらがいかにも付け足しくさいのも、むしろ清々しいではないか。

ヘラクレス 怪力ロング・バージョン [Blu-ray]

ヘラクレス 怪力ロング・バージョン [Blu-ray]