"パパの妄想は全て本当"『96時間』

 福袋でまとめ買い。BDで鑑賞。


 離婚した妻との間の一人娘、キムが、初めての海外旅行に行くということでウキウキ。父親のブライアンはヤキモキ。きちんと連絡をすることを条件に同意書にサインしたが、なんと行って早々、心配が当たってキムは誘拐されてしまった。パリに乗り込み、犯人を捜すブライアン。実は彼は、元工作員であったのだ……。


 ちょうど未見だったし、一向にいい評判が聞こえて来ない続編に備えて。


 セガール映画によく例えられる本作だが、少なくとも「パパの心情」に関して言えば、遥かに丁寧だよね。娘との関係の過保護、束縛ぶりは、妄想一歩手前で、ファムケ・ヤンセン演ずる元妻からも呆れられてる代物。彼女にしてみれば、スパイであった元夫の正体を知るがゆえにある程度の理解はしつつも、引退後もそれに取り憑かれているような所作にもう辟易している。
 娘は娘で「スパイ?」と内心思いながらもそれを口に出してしまうあたり、裏表のない性格に描かれている。旅行先のことで嘘ついたのも、母親の入れ知恵っぽいしな。パパはそんな娘がかわいくてしようがない! 時々、この手の誘拐もので「うわ〜、この子供かわいくね〜」というのがあって、それはそれで味があるんだが、こっちはなかなか正統派で良い。そんな天真爛漫な子だからもちろん処女で、それによって高く売られてしまいよりピンチに! 後半のエロいカッコをさせられるところも痛々しく、物語的には余計に盛り上がるわけだ。


 そんな元妻と娘に、不器用にしか接せないリーアム・パパだが、平時のダメ親父は非常時には強い、という本領発揮の瞬間がやってくる。妄想かと思われた「海外は危ない!」発言の通りに娘が実況付きで誘拐され、早速パリに飛ぼうとする。顔面蒼白の元妻に嫌味も言わず、事務的に強圧的に最短距離で物事を進めて行くあたりが格好良い。邦題の「96時間」はいまいちタイムリミットとしては機能してないのだが、わずかな手がかりと現地パリのコネを使って着実に追跡を進めるリーアム! 合間合間にアクション・シーンを挟むのだが、全て圧勝!
 リュック・ベッソンにかかると、パリも事件だらけですっかり危ない街にされてしまっているね。筋は平凡で雑なんだけど、会話のちょっとした間の取り方や、格闘シーンの小道具の使い方、そしてリーアム・ニーソンの表情と徐々にエスカレートしていく行動の変化の付け方がいちいち上手くて、それで見せる。「名刺が武器だ」って言ったところの、相手の反応に困ったようなリアクションが好きだ。クライマックスではさすがにスタミナが切れて来たか微妙に苦戦するあたりも、セガールじゃありえないよね(笑)。
 娘の友達のこととか、元同僚をしばき倒したこととか、色々となし崩しになって大団円を迎えるあたりも良いんではないか。90分にまとまって、小粒ながらまあまあ面白い映画。


 しかし続編の敵は、今作で殺された誰かの父親らしいのだけど、殺し過ぎていてどいつの親なのか今作ではさっぱりわからない。続編ではリーアムが「息子を殺したな」とか言われても、誰かわからず悩んでもおかしくないぞ! 意外と最後に殺した金持ちの老人の父親かもしらんな……。

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