"青い髪は冷静さの証"『ドラゴンボールZ 復活の「F」』


 新劇場版第二弾!


 かつてトランクスによって殺され地獄へと堕ちていたフリーザ。だが、軍の残党によってドラゴンボールが集められ、現世に生き返ることに成功する。特訓によって信じられない力を身につけたフリーザは再び地球に来襲。その頃、悟空とフリーザはウイスの下で修行に励んでいた……。


 なんでもテレビシリーズも復活するそうですね。鳥山明も連載しなくていいなら、いくらでも参加しようということかな……。当然、映画も第三弾あるんだろうな。そしてGTの扱いはどうなるのやら。


 今作は時系列が『神と神』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130410/1365589834)の少し後ということで、パンは産まれた後。時期的に、ブラもそろそろかな? 二作続けてブルマに割とスポットが当たっているので、今度はそういう話もさらっと出てくるかも……?


 さて、オールスター総登場の趣があった前回に対し、二本目ということで今回はキャラクターも相当に絞ってきている。敵役がフリーザだから、対戦経験のあるキャラがそもそも絞られるので、悟飯、ピッコロ、クリリンは残留。メインは当然、悟空とベジータということになる。原作のラストである魔人ブウ戦から、完全版で書き足されたカットにかけて、悟空とベジータのバディものに近い協力関係は鳥山明の中でずっとあったようで、今作はそこにスポットの当たった格好に。
 地獄からドラゴンボールによって蘇ったフリーザが、人生初の修行を経てパワーアップを遂げ、再び地球に襲来。悟空とベジータがウイスとビルスのもとに修行に赴いている間、悟飯、ピッコロ、クリリン天津飯亀仙人、ジャコが立ち向かう。18号はクリリンが参戦を止め、「ヤムチャとチャオズは置いてきた」との、天津飯によるあの名言が再び……。そもそも何で天津飯ヤムチャを置くだの置かないだのの決定権があるのだろう。本当は行きたくなかったヤムチャが、おまえは行かない方がいいと言われてそれに嬉々として乗っかった、というあたりが真相だろうか。
 何かと便利に使われてきたトランクスと悟天も参戦なしで、これは鳥山明が合体に飽きたか、ネタに詰まってた頃の産物だから忘れたいのか……。さらに悟飯も普通の顔のままで、超サイヤ人にこそなるがアルティメット化はなし。あれももうビジュアル面のインフレがしんどいので見た目は変えずにパワーアップさせるという発想だったのだろうが、これもなかったことにしたいのか……。悟飯というキャラは性格的に定期的な修行を怠る上に、怒りのパワーやら潜在能力やらを隠している分、安定して実力を発揮できなかったのだが、それがキャラとしての個性にもなっていたのに、アルティメット化でただひたすら強いだけの無個性キャラになり、単独では最強のはずなのに不遇の扱いを受けることになった。今作はそこを戻して原点回帰……のはずが、やっぱり負け役になるのは痛い。まあ次に『復活の「C」』でもあれば活躍出来るかも……?


 悟空とベジータは青い髪の「超サイヤ人SS」にパワーアップ。前作の「超サイヤ人ゴッド」のパワーを使いこなした上でさらに変化した形態……だそうである。しかしその前の修行シーンで、自信過剰だとか、いつも緊張しているだとか、カリン様やら神様に修行してもらってた時代の話みたいなことを今更やってるのが、ちょい違和感であった。
 ベジータはもっと扱いが悪いかと思われたが、悟空と実力差があまり感じられないぐらいに描かれていたし、「手詰まりになってエネルギー弾を連発するも、爆風の中から無傷で現れた相手に一撃でやられる」という定番の負けパターンを、なんとフリーザに返すという衝撃展開があったので笑った。これもパロディだな。


 全編に設定の焼き直しやセルフパロディが横溢しているのだが、つくづく『ドラゴンボール』というのは、もう完結した作品なのである、ということを実感させられる。悟空もベジータも、すっかり老成しきっていて、もはや変化は望めず、決まり切ったパターン的漫才に落ち着いていく。青い髪の超サイヤ人は、最強云々と言うよりも前作のゴッドと同じくバリエーションの一つという印象。たぶん、次作ではあっさりまた変わっているんじゃないかな。ゴールデンフリーザも同じくで、フリーザというキャラも過去の人という印象が強いが、そこをまったく脱せない。地獄へと帰っていく展開は、いかにもやられることが宿命づけられた悪役的で、Dr.マシリトを彷彿とさせる。


 前作『神と神』は、界王神以下のいてもいなくてもどうでもいいキャラとは一線を画す「破壊神」という存在を定義付け、世界観を大きく広げたところが斬新だったのだが、今作はそれが再び閉じ、あってもなくてもほぼ関係ない小話的なものに落ち着いている。「Dr.スランプ」的な緊張感のないゆるい話に加え、カラーバリエーションだけは充実させたようなコンテンツとしての商業的展開への色気、うーん、これはつまらない……。
 テレビアニメもやって、また来年以降劇場版、となると、当然延命するためには畢生の大作をやるわけにはいかないし、キャラクターも絞ってローコストにしていくのが利口なのであろうな。野沢雅子さんも三役はやっぱりしんどいだろうし……。


 ところでビーデル役は皆口裕子が復活してたのね。『改』で代わってたのは何だったんだ……?