”炎の向こうに”『クリミナル・アフェア 魔警』


 ダンテ・ラム監督作!


 香港警察の警官デイヴが勤務する病院の派出所の前に、腹を負傷した男が現れる。緊急手術を受ける男に、輸血を申し出て救うデイヴ。だが、男は特捜部に追われる武装強盗団のボス、ホンだった。彼を助けたデイヴをなじる特捜班。その時、デイヴはホンの顔にある記憶を呼び覚まされ……。


 先日『激戦』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150202/1422881099)を観たばかりですが、あちらが珍しく清々しい映画だったのに対し、今作はいつものダンテ・ラム映画だった……。


 いつもなで肩のニック・チョンに対し、今回はダニエル・ウーが超なで肩! 数々の警察署を干されて転任し、今は病院の派出所で一人勤務する男……なのだが、もう冒頭からほぼ目がいっていて、精神の均衡を欠いております。タイトルの「魔警」こそがこの男。事故にあって運び込まれた男に対し輸血を申し出るが、その男、ニック・チョンの顔に封印された過去を思い起こさせられる。
 基本的に善意と正義感を持っているのだが、どこか歪んでいて、それが物語が進むに連れてねじくれて淀んでいく。隠された過去に秘められたカルマ的なものに引きずられて……。
 同僚からは、勤務態度は真面目だが、まったく融通の利かずコミュニケーションの取りづらい男として扱われ、結果干されていたわけだが、同期の警察署長に取り立てられる形で現場に復帰。それこそが彼の内の病を呼び覚ますことに。


 伏線を張り巡らし、中盤に高いところから降りるアクション、後半に大爆発と伏線回収を仕込むいつものダンテ・ラム映画で、最後に過去が明らかになってやるせない後味を残すところまで同じ。過去に同じ顔の別人が登場したりするので、筋の通った驚愕の真相が秘められているわけではないが、サスペンスとしても楽しめる。


 しかし、完全に描写とダニエル・ウーの演技が病気の人そのものなので、過去やトラウマに起因する謎というところは置いといて、とりあえずまず薬でも飲んだほうがいいんじゃないか……という内容になっていたな。悲しいお話である、というところまでは否定しないが、物語の重さ以前の話であるような気がする。


 ニック・チョンは最近、一本の映画の中で二回死ぬのが定番になっているのか……? 今回も不死身と言えば不死身、そうでもないと言えばそうでもないと言う、若干肩透かしなポジションに収まっていて、そこが今作のひねったところでもある。


 『激戦』と続けて見ると振れ幅がでかくて面白いのだが、単品だといつもの映画という印象。とはいえ、今回はホラーっぽい味付けやグロ描写も盛り込んで来て、毎回違う工夫はやっているのだな、とも思いました。ファンなら必見。
 そしてまたアンディ・オンが出ているのだが、出て来た瞬間、「ああ、これは……」とわかってしまう刑事役で、何も中身がなかった……。なんという扱い……。