”地上最強の兵器、それは"『マッハ!無限大』


 トニー・ジャー最新作!


 あの戦いの後、象との平穏な暮らしを送っていたカーム。その象が密輸組織にさらわれた。取り戻しに行ったカームだが、密輸組織のボスはすでに殺され、カームには殺人の濡れ衣がかけられる。タイにやってきたかつてのカームの友人マークは、インターポールの一員として事件に裏があると睨むのだが……。


 そう言えば、『マッハ!』のプロモーションでジャーさんが地元なんばシティにきたことがあったのだよね。今はないロケット広場でデモンストレーションやったのを、生で見たのだ。あの頃はお互い若かった……。
 今作は『マッハ!』シリーズのタイトルがついてますが、実際は『トムヤムクン』のパート2です。まあ『マッハ』も『弐』は一作目と全然関係ない映画だったからいいけど、『ロッキー7』というタイトルの映画が実は『ランボー5』だったら困るだろうに。


 前作から5年ぐらい後の話で、主人公カームはまた新たな象と平和に暮らしていた……という設定。その象がさらわれて……という完全に前作と同じ話になる。しかしさらった密輸組織のボスは黒幕の武器商人によって証拠隠滅に撲殺され、象を取り返すつもりだったジャーさんは死体とご対面。居合わせたボスの姪であるジージャーとその妹?に狙われることとなる。
 このジージャー、全然セリフがなくて、なんでそんな針やら何やら暗殺術マスターしてるのかもよくわからないのだが、相変わらず打点の高い蹴りでトニー・ジャーに迫る!


 ボスは撲殺されており、いかにもガタイ良くて強そうなジャーさんがすぐ側にいるので、勘違いされてもやむなし。逃げ出したジャーさんを襲う、300人(ぐらい)の暴走バイク集団……!
 トニー・ジャー、さすがにかつての異常なスピードや身体能力は影を潜め、デスウィッシュスタントもワイヤーとCGが組み込まれたせいでパワーダウンした感あり。身体もでかくなって、まあもう38歳だから中年の域になって切れも落ちているのだな。ジャッキーで言うと『Who am I?』ぐらいのイメージか。十分凄いんだけど、最盛期は過ぎてしまったな。
 このなぜか屋上に上がって散々壁を飛び越えながら駆け回るバイクアクションは、怪我人続出という感じで見応えあり。ビルを飛び越える主観視点も面白かった。しかし、どうももっさりとして見えるのはなぜかな。もっと前作はテンポが良かったと思ったが。


 しかし、やはり古式ムエタイのテクニックを主体にして静から動へ、技術を見せる段になると集中力が俄然増す感じ。RZA演じるスーツで決めた武器商人の部下には、その格闘技の強さに応じてナンバーが割り振られているのだが、その中でも最強の男、「02」の焼印を持つナンバー2が襲いかかる。このナンバー2も動きキレッキレなんだけど、それにムエタイで対抗するジャーさん! しかし互角と思われた戦いは、ナンバー2の勝利で幕を閉じる。うーむ、ジャーさんやはり衰えたか?と思いきや、先に乱入したジージャーとの戦いにおいて、首に針を打たれてパワーダウンしていたのだった……。
 ジージャーは妹と共に乱入したのだが、ジージャー自身がトニー・ジャーと戦ってる間に、ナンバー2によって妹が撲殺! みぞおち、喉、顔面を三連打で打ち砕くという必殺技。これは、叔父を殺した男が使った技だーっ!


 捕まってしまったジャーさんだが、RZAはここで彼に対し熱くリスペクトを語る。おまえこそ最強の戦士、といい子飼い最強の男を超える「01」の焼印を押す! ここでジャーさんが「おまえはこの5年、全然ダメだった」と言われるシーンがあるが、これは『マッハ弐』製作中断によるゴタゴタ以降、まともに新作を撮れなかった時期を自己言及しているのだろうか?
 33〜38歳と言えば油の乗り切った時期で、またジャッキーで言うと『プロジェクトA2』〜『ポリスストーリー3』を作ってた頃……って、めちゃめちゃ重要な円熟期、最盛期やがな。まあそこまで本数取らなくてもいいけど、やっぱりいい時間を逃してしまったなあという感じは否めない。


 RZAさんが象を使って目論む陰謀も明らかになり、いよいよ最後の決戦が迫る……。ムエタイの演武のシーンがあるのだが、RZAさんが自分の顧客に対し、その強さ、美しさを語る場面あり。なんだ、このリスペクト精神……。ジャーやジージャーが無口な一方で、饒舌なRZAさんが映画の魅力を自ら語りまくる。『アイアン・フィスト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130812/1376294307)もそうだったが、ほんとにアジアン・アクションが好きなんだなあ。旧作よりパワーダウンした映画を、RZAさんが下から支えているようにさえ感じましたよ。


 クライマックスは「01」と「02」の頂上決戦……と思いきや、まだまだそれでは終わりません。最後の数字にまつわるサプライズは、まあ少年漫画やら『コードギアス』やらでもお約束になったあれで、わかっちゃいるけど大興奮してしまいましたね。


 ジージャーとの共闘、象の牙を駆使したアクション、女殺し屋とRZAさんの関係、いつものおじさんなど、まだまだ色々ありますが、詰め込みすぎのサービス精神は買います。ただ、どうも展開が重いというかキレがないのだよなあ……。


 別につまらないわけではないのだが、かつての異次元レベルのアクションを思い起こすとやっぱり物足りない出来。トニー・ジャーも身体能力的にはピークを過ぎていて、ここからは企画や見せ方で工夫していかないと苦しいな、と実感してしまった。次は『ワイスピ7』に出ているらしいのだが、果たして……?

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