”もうひとりのわたし”『フランキー&アリス』
ハル・ベリー主演作!
70年代のアメリカ、人気ストリッパーのフランキーは、ステージの後、男と一夜限りの関係を持とうとする。だが、彼女は突然、謎の発作を起こし、人格を豹変させた。病院に運ばれたフランキーを診察したセラピストのオズは、彼女の行動に不審なものを感じるのだが……。
ハル・ベリーが二重人格というと、あの映画がそうと見せかけて実は違って……とまあ、ネタバレですからムニャムニャと誤魔化しておきますが、要は完全な別人ですね。
何せアカデミー賞主演女優賞もゲットしているハル・ベリー。その演技力を如何なく発揮すべく、今作では多重人格ものに挑戦です。ステラン・スカルスガルドも出演しているので、当然、狂気のサイコ・サスペンスだろう……と思いきや、実話ベースの真面目な映画だったのでありました。
が、その癖、なぜか作りがサスペンスものの定型をなぞっているのだな。知らず知らず奇怪な行動を取ってしまう主人公だが、そこには彼女自身の過去の秘密が絡んでいて、それを解き明かしていくことが主眼となる。
スカルスガルド医師が、研究医であるにも関わらず興味を惹かれ、治療に当たることになり、主人格の「フランキー」、奇矯な行動の元である「アリス」、隠れたもう一つの人格「天才」を見出していく。
エンタメサイコ物なら何回もひねるところだが、実話だから当然、それはなし。それゆえに着地点を少々平凡に感じてしまう。いや、サスペンス仕立てにせずに、治療過程やその後の人生をじっくり見せたりしていけば、それはそれで興味深いものに仕上がったと思うのだが、下手に謎を設定したから、ああこんなことか、となってしまうのだよね。
サイコ・サスペンスなら、実験に取り憑かれたスカルスガルド医師がどんどん暴走して過激な実験を始め、ついには「アリス」が主人格となり殺人を繰り返すようになるんだが、実は全てを仕組んでいたのは「天才」だったということになるのだろうか。
三役を演じるハル・ベリーの演技は確かにさすがだが、白人でレイシストの「アリス」の人格の演技は、『ヘルプ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120407/1333791288)のブライス・ダラス・ハワードの完コピに見えなくもなかったのであった。
別に何も悪い映画ではないのだが、いかにもパンチ不足でありました。
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