”獣と呼ばれた男”『スプリット』(ネタバレ)


『スプリット』本予告

 シャマラン監督作!

 級友のクレアの誕生日パーティに招かれたケイシー。同じく同級生のマルシアと送ってもらう帰り道、車に乗り込んで来た謎の男によって、三人は拉致されてしまった。地下室に監禁された三人の前で、男はいくつもの人格を見せる。彼は何者なのか? その目的は?

 『ヴィジット』で息を吹き返し、絶好調のシャマラン! 次なる新作はジェームズ・マカヴォイを起用し、多重人格者もの! 今回も衝撃のラスト!と煽りまくっているが、まあ別の意味で衝撃的でありましたね。

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 23の人格の持ち主、というマカヴォイだが、3つの人格が他の人格から主導権を乗っ取っている状態で、自然とこの三役が中心となる。男性、女性、少年と演技のバリエーションがわかりやすい。さらに男性の人格が別の人格のふりをしている演技内演技もあり、複雑なことを嬉々としてやってる感じが楽しいですね。もちろんそれと裏腹に、多重人格形成の根源として児童虐待が匂わされ(この辺りは『シックス・センス』にもあったモチーフ)、悲痛さとそれによる居心地の悪さも共通して流れる。

 さらわれてくる三人の少女の内、主人公であるケイシー(演じるはアニャ・テイラー・ジョンソン)にも、家庭環境に問題があることが伺え、さらに過去にこれまた性的虐待があったことが、割と露骨に……おおう……叔父が気持ち悪っ……! このアニャさんはいわゆる美女じゃないがゴスっ子的に周囲から浮いたムードと目力の持ち主で、なかなかインパクトがある。

 マカヴォイを診ている精神科医が、彼を稀有な症例として見つつ、そうして精神に疾患を持つ人間に超常的な能力が発言するという研究を発表。この婆さんも妙な生活感があって、いい味出してるな。この辺は『ヴィジット』から受け継がれたところか。

 監禁にまつわるサスペンスの中で、これら三つの糸が次第に縒り合わされ、一本の線となっていく。最初は互いにどう関係があるのか見えづらかったのが、24番目の人格の誕生をキーにして、物語の構造が見えてくる。

 「獣」と呼ばれる超人の誕生は、他の監督の映画なら「ありえない!」を基本として、もしかしたら本当に……と思わせるサスペンスとして展開しそうだし、今作も一応そういう話運びになってるような気がするのだが、そこはまあシャマランなので、「それは、当然、起きます!」と思いつつ見てしまうところ。
 ところで、シャマランで超人というと……?ということで、そりゃあ『アンブレイカブル』のことになるわけで、今作はそれと世界観を一つにしていることがエピローグで明らかになる。
 うーむ、15年間、「観たいけど、ねえだろうな」と思っていたことが不意に実現したからビビリまくったな……。もう一本作るそうですよ。最後にハゲが出て来たところでも大満足だったが、次はサミュエルも登場か?

 いくつか展開の上で消化不良の部分があって、ケイシーは叔父さんをぶち殺すのかと思ったが、あれが温存されてしまうのが、次の超人誕生のキモなのかもね。マカヴォイの行く末も気になるところで、新ヴィランとして不死身の男と対戦することになるのであろうか。

 最近、ユニバース構想が大流行りだが、シャマランが「じゃあ俺も俺も!」ということでシャマラン・ユニバースをぶち上げたような映画。Tダイヤモンドとか、宇宙から来たラッパーとか、幽霊の見えるデブとか出てきたら、ますます面白くなりそうではありますね。