”南海の大決闘!"『ライズ・オブ・シードラゴン』


 ツイ・ハーク監督作!


 唐朝末期、隣国に侵攻した唐の大艦隊が、謎の海竜の攻撃を受けて沈んだ。則天武后は司法長官ユーチに、海竜の正体を解き明かせと厳命。手をこまねくユーチ。だが、都にやってきたディーと名乗る判事が、海竜への供物となるはずの芸妓インの誘拐事件に巻き込まれたことで、事件を解き明かす切っ掛けをつかむことに……。


 『王朝の陰謀』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120509/1336566766)の続編……ではなく、前日談。皇帝に破格の権限を与えられている判事ディーが、なぜにその名誉を得るに至ったかが描かれる、始まりの事件とでもいうべきお話。


 ……なんですけど、いきなりの水上大パニックから始まり、もう推理なんて存在する余地がありませんから! 水中を驀進する謎の生物によって艦隊が壊滅! これ、日本ではほそぼそとシネマートなんかで公開されてますが、本国では3D映像、音響はドルビー・アトモス対応の超大作なんで……。最近では『ドラゴンゲート』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130115/1358251012)も公開されましたが、ツイ・ハークの大ワイヤーアクション映画でもありますよ。


 巨大な海龍を鎮めるため、異国人の芸妓を生贄にするということで、ここで我らがアンジェラベイビーが登場。今回はほぼ囚われのヒロイン役で『太極』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130820/1376909845)シリーズのような活躍はなかったのがちょい残念。同じ頃、都にやってきたディーが、彼女が襲われたことをきっかけに、海龍を操る者の正体を探り始める。
何分かごとに急展開が起きて、その度に実はあれはこうだったのだ!とプチ解決が繰り返されるので、推理ものとしてはいまいち成立していない。そこらへんは『王朝の陰謀』の方ががんばっていたが、あれもいかにも怪しい人が序盤から出ていたりしたわけでなあ……。
 それよりも矢継ぎ早の展開と、怒涛のワイヤーアクションとCGバトル、盛りだくさんのエンタメ展開を見る映画。ただ、これだけてんこ盛りなのにあまりに緩急がないので、メリハリがなく若干眠いのがまたツイ・ハークらしい。主演のマーク・チャオの顔面のように起伏がない。ここらへん、前日に観た『トランスフォーマー ロストエイジ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140819/1408461798)のマイケル・ベイにも共通するところだな。
 しかし、やっぱりツイ・ハークって感性が若いのだなあ、と思うのは、ややクラシックな殺陣や美術を昔の作品そのままにしながら、最新CGもしっかり取り入れ、ごたまぜのようでいてやっぱりこの人にしか作れない完成度まで引き上げているところかな。かつて、これこそ実写版ドラゴンボールじゃないのかという映画だった『天上の剣』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110123/1295709816)の頃は、さすがにCGが稚拙に感じたものだったのだが、今作はその滑った感覚がそのままドライブして高みへと駆け上がったような豊かさを感じる。これこそが撮りたかったものなのだな、という気がしますね。


 さて、主演はアンディ・ラウからマーク・チャオに交代しましたが、いやあ、やっぱり華がないなあ、こやつの顔は……。何回観ても好きにはならんわ〜。エンドロールを見る限り続編のネタには事欠かないようだが、どうでしょう、主演だけは毎回交代してもいいんじゃないですかね? 次は『王朝の陰謀』との、ちょうど中間ぐらいの時期の話にして、もう少し年取った役者にしては……。