”その世紀の初めに"『機動戦士ガンダムUC 7 虹の彼方に』


 ついに完結!


 ラプラスの箱の隠された始まりの地、インダストリアル7を目指すネェル・アーガマとレウルーラ。先行したバナージの乗るユニコーンは、リディのバンシィに阻まれる。ネェル・アーガマネオ・ジオンモビルスーツ群が立ちはだかり、刻一刻と時間は失われていく。マリーダは改修したクシャトリヤを駆り、バナージを援護するために出撃するのだが……。


 いやはや、7巻に渡るシリーズもとうとう終わりか。さすがに感慨深いですね。さて、今回はその「感慨」というのを踏まえて、冒頭についた「前回までのあらすじ」を、丸ごと「ファーストガンダム逆襲のシャアまですべてのあらすじ」にしてしまい、より壮大さを強調。ガンダム、Mk-2、Zの起動をユニコーン初起動とオーバーラップさせる演出。うわああああああ、カッコいいぞお!(泣いた)
 さらにフォウがジェリドに殺されるシーンを入れて、UCはテレビ版準拠!とアピール(でもところどころ劇場版のカットも使うよ!)。そして……コアファイターをコアトップが追い抜いたぞおおおお! ZZが合体だああああ! ハイパー・ビームサーベル小惑星をぶった切ったぞおおおお!
 おおおおおおおお……まさか劇場のスクリーンでZZの合体を見られるとは思わなかったわ……なんという感動……!(また泣いた)
 まあ逆シャアも見たのはビデオだったけど、今後永遠に劇場でかからないと思っていた映像が映るのとは、全然衝撃度が違いますね。
 「前回までのあらすじ」は、毎度うぜえなあ、と思っていたが、今回はほぼ本編だったね。いやはや、堪能しました。うっかり遅れて入らなくて良かったぜ。


 そうして宇宙世紀振り返りを踏まえて、ここから本編。ここまでの感想は、


1(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100311/1268311054
2(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101031/1288522603
3(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110307/1299466095
4(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111114/1321284347
5(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120525/1337922513
6(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130308/1362714560


 物語に関しては、原作最終巻(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20091219/1261223290)で感じたことと、やっぱり同じでありましたな。福井晴敏ララァやらアムロまで登場させて正史ヅラしちゃうことへの違和感というのは、やはり拭えない。


 それはさておき映像面では、今回はランタイムも長く、ほぼ映画に近いクオリティに仕上がっていたな。ところどころ、あれっ、ここは動かないの?と思ったところもあったが……。
 前半はネェル・アーガマユニコーンを襲うバンシィとネオジオン艦隊。バンシィを振り切れないユニコーンを救うため、クシャトリヤでマリーダが出撃する……。うむむむむ、シナンジュvsクシャトリヤはなしか……ということは……おお……やはりバインダーをファンネルに変える力技もカットか……あのシーンが一番好きだったのだが残念すぎる。代わりにファンネルミサイルを撃っていたのはちょっと面白かったがね。
 しかし、何だかその「面白さ」が、意表を突く展開やキャラクターの活躍で盛り上げるのではなく、設定を見せることで楽しませるオタクチックな要素がやたらと目立ったのもちょっと気になったところ。いや、バウの分離攻撃や、ザク?の口ビームを見られて良かったなあと思ったのも確かなのだが、物語上の盛り上げと一切関係ないからな。それなのにマリーダさんの見せ場はカットで、アルベルト以上につながりのないリディとの対決で終わりというのは、どうもバランス悪い。


 後半はついにお楽しみのネオジオング登場! が、なんか仁王立ちしすぎで、あまり動かなかったな……。単に破壊兵器なのではなく、サイコマシンという設定のせこさがマイナスに出たか……。なんだ、あの相手MSを操るとか、せせこましい戦いぶりは……。フロンタルさんのキャラが、まあ結局小説みたいに悪意の深さを書き込めないからマイルドになった感も手伝い、ガチの対決をしてるんじゃなくて、大仏と孫悟空の禅問答みたいな戦いになってしまったね。
 最終的にラストシューティングにつなげる初代オマージュじゃなく、ガンダムが素手で殴りかかる逆シャアオマージュにつなげたあたりも、その前にわざとらしく武器だけ全部壊れるシーンでちょっともったいないなあと思ってしまったよ。


 どうも役に立たず、単に援護役か解説役かになってしまったリディの中途半端な立ち位置もいささか苦しい。バナージみたいにピュアじゃなく、かと言って立派な大人でもない、実際の作り手に近いキャラで、こうしたキャラなしで物語をつむぐことへの照れが生んだ存在だったのであろうか。バナージの行動をなぞってことごとく何かが足りない結果に終わる、というのは、どことなく悟空に対するベジータ的な立ち位置にも感じられるところ。


 総じて面白かったなあ、とは思ったものの、やればやるほど何かが足りない、何かを履き違えているように感じられるのが、やっぱり御大が作ったものを解釈しなおしたがゆえのズレであろうか。膨大な書き込みでカバーした小説版に比べても、いかにもあっさりとして分が悪い。
 大人の善意を次代につなげる、とガンダムで言われてもなあ……。いい加減、見ているこちらも大人側世代なわけだが、自分たちが後の世代にいいものを残せるかはまだまだこれから。そういう意味で「いいものを残したくて、結局はうまくいかなかったけど、善意はあったんだよ! 託すから受け取ってよ!」という大人を先回りして見せられると、妙に自賛的に感じられて、どうもなあ。宇宙世紀ってこんな話だったっけ? という感がつきまとい、そこを本来、フル・フロンタルという悪意に満ちた怪物の存在がバランス取ってたんじゃないかとも思ったのでした。