”その全てを暴き出せ"『ダイアナ』
ダイアナ妃の最後の二年間を追った映画。
夫の不倫を切っ掛けに別居して三年目を迎えたダイアナ妃。家族の見舞いに行った病院で、彼女はハスナット・カーンという医師と出会う。彼女を特別扱いしないハスナットに惹かれるダイアナは彼に勇気づけられ、ついに離婚を決意。「人々の心の王妃」として、人道支援活動にのめり込んで行く。だが、ハスナットとの関係は徐々にすれ違いはじめ……。
このところ、TOHOフリーパスを使っているので、まあタダだから観に行こうか、なんて思って行ったのだが、まあやっぱり興味のない題材はつらい、ということを再確認したのでありました。
世界中に愛されたダイアナ妃と言えど、実際はごくごく平凡な一人の女性である……ということは、まあそりゃあそうなんだろうけれど、その中で平凡な家族関係による病院通いで知り合った平凡な医者と平凡な出会いをして平凡な恋愛をしました……と言われても、うーんとうなってしまうのである。
離婚も控え、何かと忙しくて予定ビッシリのダイアナ妃だが、同じく急患に呼び出されてしょっちゅう仕事が詰まっている医者とは意外にバランスが取れる……という辺りが序盤だが、段々ズレが生じてくる。相変わらず注目度は一向に下がらないダイアナとそのパパラッチに振り回される医者はキャリアの危機に……。この医者の人、別にイケメンでもなく、家族関係やキャリアを大事にする保守的な人で、注目されすぎなダイアナとの恋愛はマイナス要素が多過ぎると考えるように。で、まあ結局は男だから、やっぱりコネや権力を持ってるダイアナにコントロールされることを猛烈に嫌うのだね。
パキスタン人でイスラム教徒で、遠い地にまるで違う故郷を持っていて、やはりそれがダイアナのどこか遠くへ行きたいという願望を猛烈に刺激したのだが、本人は今いる病院から動くことを望まず、自由への切符を求めているダイアナとはますます噛み合なくなっていく。
まあ実話であるということだからしようがないのですが、面白くもないし、ためにもならないお話で、そこがまあリアルと言えばリアルだが、別に映画にしなくても良かったんじゃなかろうか。
ブルース・リーの幼少期を描いた『李小龍 マイ・ブラザー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130804/1375544706)も、わざわざこんな地味な時期だけをピックアップせんでも良かろう、と思ったのだけれど、今作も最後の二年ぐらいということでドラマチックなはずが意外に地味だった……という感じだろうか。
しかしまあ、作中でダイアナの最期を暗示するように冒頭からパパラッチが出てきて辟易して、それが中盤以降も繰り返され後半はエスカレートしていき、「秘密の恋」も暴かれていく……という展開になり、もう放っておいてやれよ、と思うわけだけれど、その大きなお世話感をこの映画そのものからも感じてしまうのが、最大のネックであろうか。
隠された真実を明らかに……というが、その真実とやらが、このどこにでもいるような平凡な女性の地味な恋愛模様なのだとしたら、ちっとも明らかにする必要などないし、死してなおパパラッチしておるも同然に思えるのだが……。
ダイアナを殺したのがパパラッチであり、この映画は彼女の墓を掘り返しておるようなもので、パパラッチにそこまでさせた大衆と同様、この映画の観客である自分も墓掘りの片棒を担いでいるようで、考えていると実に実に嫌な気分になったのでありました。それを中和するためにあるのが地雷処理の啓蒙活動の「ちょっといい」エピソードだとしたら、ますますもってせこい映画であるよ。
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