"常冬の引力"『フローズン・グラウンド』
ニコラス・ケイジ主演作!
手錠で繋がれた17歳の娼婦が保護される。殺されるところだったのを命からがら逃げてきたと供述する彼女だが、警察は相手の男が街では善良と言われている男であったために取り合わず、事件を握りつぶそうとする。保護した警官は疑問を感じ、資料を州警察に送る。その頃、州警察の巡査部長ジャックは、偶然見つかった何体もの女の変死体から、連続殺人の存在を疑っていた……。
ニコラス・ケイジとジョン・キューザックが共演ということで、これは『コン・エアー』以来らしい。今回は対決ということだが、最近『ペーパーボーイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130803/1375523993)など悪役づいているジョン・キューザックが、今回も連続殺人犯を熱演! 悪役やってそうでやってないニコラス・ケイジと違い、過大にスターとしての期待をされてないからか、なかなかいい感じにキャリアを積んでいるのではないだろうか。今回もほんとに気持ち悪くて、一見平凡な人なんだけれど実は……というキャラクター。
元が実話なので、キャラクター付けにこれという特徴に乏しかったり、犯行動機がまるで不明だったり、色々と証拠が残っていたりと、物語的な仕掛けや見せ場には乏しい。が、これこそがリアルな殺人鬼の実態なのだろうね。外見も平凡で、保守的な街で家族も持っているから怪しまれる要素もないし、娼婦買いを時々やっててその延長で監禁殺人をやってるから、初動でも怪しまれにくい。同じリズムで淡々と繰り返して、それがほぼ日常になっているので、周囲も不審に思わない。被害者も家出だ夜逃げだで片付けられてしまうような人ばかり。
主人公のニコラス刑事、殺人犯キューザック、そして殺人犯の魔手から初めて途中で逃れた娼婦ヴァネッサ・ハジェンズの三人の視点で物語は進む。ニコラス刑事は今回は実に普通の演技で、特別変顔もしないし無難な感じにまとめている。いや、むしろこれぐらいだったら普通に上手いし格好いいよね。キューザックさんは、慎重かつ大胆なキャラクターで、『ペーパーボーイ』ともまた違った嫌らしさを見せてくれてるし、抑えた演技をじんわりと煽る演出も噛み合ってますね。で、ヴァネッサ・ハジェンズのパートで、孤児の不遇やセックスワーカーへの偏見などの視点も盛り込む。
まあ「実話」としての広がりを持たせようとしたからか、ちょっと構成的には欲張ってしまったかな、という感じで、地味さも手伝って強烈に印象づけられる何かがあるかというと物足りないかな。しかし、多くの犠牲者が眠る陰鬱で寒々とした舞台の雰囲気は素晴らしく、良い映画でありました。
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