"禁忌の果ての祭典"『獣人島』

 カナザワ映画祭2013、五本目。


 船が難破し、貨物船に辛くも救助された青年パーカー。モントゴメリイという男に介抱され、婚約者の待つ港へ送られることになる。だが、漂流者を嫌った船長によって、モントゴメリイを迎えに来た船に落とされ、やむを得ず彼の向かう島へと同行することに。島の主モロー博士に出会い、島の住人たちを目にするパーカー。そこにいたのは、まるで直立した獣のような生物たちであった……!


 高橋洋氏と稲生平太郎氏のトークショーの前に。ご存知ウェルズの『モロー博士の島』の初映画化で、1933年の映画である。マーロン・ブランドの出ていた『D.N.A』しか観てなかったので、なかなか新鮮でありました。
 モノクロなので、当時の特殊メイクの粗さも逆に目立たないし、白人の主人公や博士と対比して、獣人役に他人種、他国籍の役者を揃えているあたり、わかりやすく差別的である。わざわざ女性キャラを出してこないと、主人公たちもそのおぞましさを正面切って語れないあたり、差別がカジュアルに横行していた時代の空気が露骨に出ているのだな。
 そう言えば『D.N.A』では、ロン・パールマンが獣人のリーダー格を演じていて、一人だけメイクが少なく見えて、獣顔と言いたいのか! そういうことなのか! と少々義憤を感じてしまったのを思い出しましたね。その後、『ヘルボーイ』が作られて、本当に良かったなあ。


 話がそれた。元の話の面白さと、特撮が発達していないために普通に人を突き落としたりしている危ない感覚もあいまって、古い映画にあるのどかさの中に、今作ならではの絶妙な不安感が漂う。日本の特撮では『マタンゴ』にも通底するムードですね。デジタル上映だったので、オリジナルのプリントで観たらまた違った印象を受けたのかもしれない。


 まあしかし、そういったことはさておき、稲生氏によると今作はそれよりも「手術台」が出てくる「手術台映画」の系譜に連なる作品だ!ということで、そうした目線で見るとモロー博士の研究室もぐっと趣が出てくるわけだ。


 サイレントでない時代のものでは、ここまで古い映画を見たのも珍しいので、なかなか良い体験でありました。