学生残酷映画祭より三題『Maria』『キレる』『へんたい』


 金沢で行われた地下イベント「マグマ!」(http://magmaknzw.hateblo.jp/ )にて鑑賞。


『Maria』

 別れたはずの女が実は妊娠しており、つきまとわれるようになってしまった男の恐怖。

 前半の映像と音楽のみで関係性を見せ切ったクリップ的な演出と、後半のくど目の、漫画の吹き出しを読み上げてるような台詞回しの配分が、アンバランスなようでいてそうでもない。台詞なしの前半から、どこか「マリア」の能弁さのようなものがうかがえるからであろうか……。
 上映前の挨拶で、「私は準主役ぐらいです。頑張って脱いでる主演の子のお尻に注目してあげてください!」と言った出演・監督の中尾氏の無邪気な腹黒さとでも呼べそうな感覚が如何なく発揮されており、怖かった。臓物による往復ビンタが秀逸。
 そして、翌日の高橋洋稲生平太郎トークショーの内容に則れば、これも「手術台映画」の系譜につながるのであろう。


『キレる』

 リストラされてスーパーでバイトしている元サラリーマンが、はるか年下の店長に罵倒される内に切れてしまい、同じスーパーでバイトしていた主人公がそれに巻き込まれる。

 学生映画祭だから、なんとなくキャストは学生で固めなければならないのかと思っていたら、中年男性が出てきたので驚いた。今作は絵がどこも抜群に良くて、構図にセンスを感じたところ。序盤のロッカーのシーンの切り返しや、後半の電話ボックス破壊やトイレのシーンなどどれも好き。
 ラストのカットは『嘆きのピエタ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130702/1372692105)を彷彿とさせたね……って、そりゃあ褒めすぎか!


『へんたい』

 街を徘徊し獲物を狙う変態男が、偶然に見かけた女は、かつて彼を目覚めさせたあの女なのか?

 昨年の大賞作品だそうだが、それだけのことはあるパワフルな映画。急にオカルトになって、変態が「真なる変態」との対峙という試練を迎え、自らもさらなる変態へと脱皮する……という不条理極まりない展開を持って行くだけの推進力が素晴らしい。それだけやっといてオチはそれなのか!という外し方も短編らしくてナイス。チンコによる主観視点は笑った。