"二人はイチャラブ!?"『スタートレック イントゥ・ダークネス』


 J・J・エイブラムススタートレックの第二作!


 突如、自爆テロによって攻撃を受けたロンドン。犯人である軍の裏切り者ジョン・ハリソンは、さらに司令部をも急襲し、パイクをも手にかける。エンタープライズ号の姿を未開の異星人にさらしたことで格下げを受けていたカークだが、提督の命令を受け、クリンゴンへと逃れたハリソンを追う。命令は、新型魚雷を用いてのハリソン抹殺であった。


 前作観てないので、さすがに辛かった。カーク船長の成長、スポックとの友情、シリーズ最強の敵の登場……とまあメインストーリーはそれなりにまとまっているのだろうが、見事に興味がわかないまま終わってしまった。やっぱり細部の設定を知らなさすぎるので、「えっ、スポックってケンカも強いの」とかいちいち思っておるようでは、全然集中できない。
 エンタープライズ号に思い入れがないので、「それよりでかい宇宙船が!」という絵面を見せられてもピンとこないし、「奴の本当の名は……!」のところも、「あっ、聞いたことあるかも……」ぐらいで流してしまったのであった。そこのところにいちいち反応できればさぞかし興奮するのであろう、ここは興奮するポイントなのであろう、というところは色々とあったものの、それ抜きだと、「どうせ仲直りするんでしょ」「あいつはどうせ裏切ってるんでしょ」などと見え透いたお決まりの部分がどうも目についてしまう。まあやっぱりファン向けの映画でしょう。


 とはいえつまらなかったわけでもなく、クリンゴンと戦うあたりで寝てしまったものの、その後はまあまあ楽しめた。
 相変わらずサイモン・ペグは出てくるだけでおかしいし、あの横についてるチビも、何ら勘所がわからなくても独立したシュールな面白さに満ちている。
 カンバーバッチさんの悪役は、知能も体力も人類を超越している、ということだが、まあスペック上は高いのかも知れないけれど、無表情な割に感情的だったり策に溺れたりと、本質的に頭のいい人ではないのだなあ、という感じがしてしまった。……が、たぶんそのお間抜けさんっぷりが『スタートレック』シリーズにおけるこのキャラクターの味、というか、シリーズ全体のテイストなんではないかな。それとも、エイブラムス映画らしい、ガチャガチャしたアクションを体現しているのだろうか。
 日本の試写で観ていたカンバーバッチさんも、ポップコーンとビール持って爆笑していたそうだが、あまりシリアスに捉えてはいかんような気がする。そうして見ると、無表情なんだけど、怒りをこらえてプルプルと震えたり、びよよよーんとジャンプしすぎる彼がやたらとオモシロ演技に見えて笑えてくるのであった。


 あの隊員の着ているピチピチのスーツや、女性隊員の無駄なミニスカも笑いどころ。ピーター・ウェラーが何の役で出ているのかな、と思ってたら、まさかの艦隊総司令。いや〜、身体がロボに改造されてない彼の貧相さと貫禄のなさは異常で、ピチピチスーツも微妙に似合わない。ミスディレクションながら最初の会議シーンでも頭悪そうなことを連呼しまくるので、大丈夫かな、と思ってしまったよ。ただ思うに、この世界ではおそらくもうデブは根絶されているのではないかな。道行く人とかにいたかどうかは細かく見ていないが、ダイエット技術が確立されていて、肥満体の人は存在しないに違いない。だからみんなしてピチピチスーツやミニスカを着用できるわけだ。そしておそらく、あのピーター・ウェラーの痩せっぷりは、逆にある種のステータスなのではなかろうか。「痩せてる」は「貫禄ある」と同義で、「激やせ」ピーター・ウェラー→「ちょいやせ」ブルース・グリーンウッド→「ややマッチョ」クリス・パインの順でどんどん貫禄がなくなっていくに違いない。


 スポックさんとカーク船長は、もはや最初からイチャイチャイチャイチャしてるようにしか見えなくて、鼻についたなあ。「おまえら、デキてるんだろ!」「さっさとチューしろよ!」と本気で野次りたかった。いやいや、そこに萌えるんだよ、と言われればそれまでだが、あのもじもじっぷりはなかなかイライラさせてくれた。いちいち「怒ってるふり」をしたり、困らせるためにわざと反対意見を言ってるように見えてしようがないのである。たぶん、本気で意見が対立したりドライにお互いを捉えている段階は前作で消化していて、今作では「本当は通じ合ってるんだけれど、まだお互い素直にはなれない」という、他人がやってるのを見たら世にも気持ち悪い段階に突入しているんだね。こちらは運悪くそこだけいきなり見てしまっているから、何なのこいつら、勝手にやってろよ、と思ってしまうわけだ。演出的には、お互いの目を見てキラキラウルウル……がやたら多いような気がしたな。つうか、エイブラムスの恋愛表現って、そんなおぼこいのばっかりなんじゃないか……? 他のサンプルが『スーパー8』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110705/1309788973)の小学生どもしかないから、オタク監督は大人の恋愛を撮れるか?は保留しておくが!
 その点、カール・アーバン演ずる医者は、関係性が薄い分、まだ本気で怒ってる感じがあっていいですね。


 そんなこんなで『M:I:3』ではマギーQのパンツ、『スーパー8』ではエル・ゾンビちゃんと、エイブラムス映画では枝葉ばかりが気になることが続いていたのだが、今作もその例外ではなく、本筋のどうでも良さが異常であった。全部が全部嫌いじゃないんだが、引っかかる部分があまりに偏っていて、やっぱり相性悪いなあ、というところをひしひしと感じたのでありました。次はスルーでいいかな……って、『スターウォーズ』だっけ。

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