”たまにはカツレツを食べよう”『バレット』


 ウォルター・ヒル監督作。


 依頼の通りに殺人を遂行した殺し屋、ジミー・ボノモ。だが、依頼主の裏切りによってバーで襲撃を受け、殺し屋キーガンに相棒を刺殺される。自らは辛くも追跡を逃れたジミーは、事件の謎を追う刑事テイラーを助けたことで、彼と組んでキーガンを追うことになるが……。


 外食する時、今日はトンカツを食いたいなあ、と思う時があって、そういう時はだいたいKYKで180グラムぐらいあるでかいロースを、お代わり自由のごはんとキャベツと一緒に食べようということになる。量と値段、コストパフォーマンスを考えると、それがベストの選択だ。


 だが、それとまた違うチョイスとして、洋食屋さんでカツレツを食べるということがある。ちょっとしたサラダとスープがついて、肉はヘレであったりする。料金が同じでも、ボリューム的にはいささか見劣りする。だけど、とんかつソースじゃなしに、塩胡椒や自作トマトソースで味付けしてあったり、洋食屋ならではのこだわりがある。特別美味いと言うほどでもないけれど、店構えや雰囲気など、昭和を感じさせる懐かしさ込みで美味しいものである。そっちを食べたい気分の時があるのだ。


 自分にとってこのウォルター・ヒル監督の『バレット』はそんな洋食屋さんのような映画であった。やや絞った筋肉を見せたスタローンの、スタローンであると言うこと以外に何の重みも感じさせない殺し屋ぶりは、もはやがっつり食ったな、とは言い難いメインのカツレツである。美味いっちゃあ美味いけど、食べ慣れてるし物足りない。昔の方が大きかったような気もするし……。でも、ちゃんと、彼ならではの味わいがある。


 店の雰囲気は老舗ならではの居心地の良さで、ここらへんはさすがであるな、と思ったが、90分で食べ終わる割には、妙に料理の進み具合が遅くて、逆にその心地よさが仇になって眠くなる。ストーリー展開は、どっかで見たような、をすでに通り越して、わかり切った代物である。店内はいつの間にか無線LANが通じるようになっていたりと、似合わない時代の流れも感じた。


 久々にメジャーどころで出てきたクリスチャン・スレーターは、カラッと揚がったポテトフライのような安定感があったし、なぜかカツレツの横についていたエビフライが意外な生きの良さであったようなジェイソン・モモアさんの躍動感も素晴らしかった。しかし、サン・カンの最初から最後までなぜ自分がここにいるのかわかっていないようなうすらぼけた精彩の欠きっぷりは、ちょっと魚介を使っては見たものの、全体からは浮き上がってしまったサラダのようだ。


 そんな感じで不満点もところどころあるものの、トータル・パッケージとして洋食ウォルター・ヒルのスタローン定食は、昔食べたシュワルツェネッガー定食や、ニック・ノルティエディ・マーフィのコンボセットを思い出しながらちゃんと楽しめたし、また食べてもいいな、と思ったのであった。


 思えば『アウトロー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130208/1360236970)なんかも、きっとこんな感じで美味しく味わえる映画のはずであったんだよね。でもあれは店の雰囲気はいいのに、メインディッシュがなあ……。脂っこいのに、「どうです? 美味いでしょう? いくらでも食べたいでしょう?」としつこくってさあ……。あれを胃もたれせずに平気でパクパク食べられる人も多いんだろうがなあ……。

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