"燃えよ郷土愛"『ロンドンゾンビ紀行』


 ゾンビ映画


 ロンドンの下町、イーストエンドで老人ホームの閉鎖が決定された。祖父やその仲間たちが行き場を失うことに憤ったテリーとアンディの兄弟は、仲間と共に銀行を襲う計画を立てる。だが、元凶である再開発の工事の際、封印されていたゾンビが甦ってしまい……。


 かなりたくさんゾンビ映画も公開されているが、なかなか見に行ってないなあ。そんなわけで『桐島』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120905/1346763191 )以来のゾンビ(あ、『ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121128/1354094466 )もそうか……?)。


 『ショーン・オブ・ザ・デッド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110617/1308283794 )リスペクトで作られたという話で、ロンドンの下町が舞台。貧困化し、再開発が進んでいることによって、主人公たちの祖父が暮らす老人ホームの閉鎖が決まる。しかしその再開発こそが、地底に封印されていたゾンビを呼び覚ましてしまう。
 早々にクソ企業の再開発は無茶苦茶になるのだが、今度は老人ホームもゾンビに襲われ大ピンチ! さらに祖父を助けるために銀行強盗をしていた主人公ら兄弟も、外に出たらゾンビだらけになっていて仰天。ゾンビの名の下には、すべての人民は平等なのである、という格差崩壊のカタルシス。
 生き残ってるのは食い詰めた主人公の仲間と、老人ばかりだが、ぎりぎりのサバイバビリティを発揮してピンチを切り抜けて行く。ちょうど強盗用に武器も用意してたしな! 主人公兄弟は、特に弟の方がダメな感じ。兄の方がよりひょろい頼りなげなルックスなのだが、普段やってた仕事も、今回の強盗も常に弟を引っ張っている。全然理想的な人物は登場せず、誰か一人が飛び抜けた活躍をするかというとそうでもないし、チームワークが活かされるわけでもないのだが、等身大に助け合って何とか切り抜けて行く感覚。


 最初の内は武装不足で必死だが、充実するに従って火力で圧勝するあたり、ゲーム感覚でもあったな。歩行器の老人とゾンビの史上最遅チェイスと、終盤の大銃撃戦が好対照。移動に使う赤い二階建てバスも、ロンドンならではで素晴らしい。昨年見た『ダーケスト・アワー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121216/1355652578 )ともまたそっくりで、最後は反撃と郷土愛を宣するあたりも似ていたね。


 ただ、なんだろう、ゾンビそれ自体に関しては一瞬たりとも印象に残らなかった……。単に障害物としか捉えられていないからか……。終末的感覚も最後で否定されるしな。