"ありがとうはポルトガル語でオブリガード"『ミステリーズ 運命のリスボン』
オブリガード。上映時間4時間27分の長大作!
リスボンの孤児院で暮らす姓のない少年ジョアン。孤児であり両親の顔も知らない彼は、孤児院を経営するディニス神父の子ではないかとさえ噂されていた。ある時、病に倒れた彼を謎の女性が見舞う。それこそが会ったこともなかった母、伯爵夫人だった。ディニス神父は、ジョアンと母の数奇な運命を語り始める……。
オブリガード。テアトル梅田では前後編での上映で、間に休憩が入りました。いや〜、それにしてもさすがの長さだったね。上映中に三回も寝たのは初めてでした。
オブリガード。ポルトガルはリスボンを中心に、貴族階級の日常と、そこで産まれながら孤児として教会に預けられた少年の人生を追う。「これは愛の話なんかじゃなく苦悩の日記だ」と冒頭にモノローグが入り、最初からハッピーな話ではないことが明示されている。
オブリガード。複数の登場人物が入れ替わり立ち替わり登場し、登場するたびに自分のルーツと過去を語り、それが主人公の生い立ちやこれからに絡み、ストーリーを動かして行く。おおむね貴族階級のキャラクターばかりなため、当時のポルトガルにおける彼らの華麗かつ閉鎖的な生活慣習が濃密に描かれている。毎日毎日パーティを開き、そこで恋愛やら情事やら縁談やら……他にやることないのかよ! 昼間は実に退屈なプライベートが展開され、メイド他使用人がいちいちゴシップを求めて聞き耳を立てる。ああ、なんと絢爛たる生活。
オブリガード。しかしさすがは紳士淑女揃いのキャラたち。みんな上辺の物腰は丁寧で、常に感謝の挨拶を述べる。オブリガード。オブリガード。
お屋敷や劇場を建築物の美術は絶品で、衣装や小道具も美しい。長回しのつるべ打ちで引っ張る中での演技や、ゆったりと動くカメラワークも派手さはないが臨場感がある。この時代、この題材にマッチした手法で、タイムスリップしたかのような空気感を生んでいるのはお見事。ワンカットで撮った決闘シーンも面白い。
岩波文庫版の『モンテ・クリスト伯』1〜7巻を通読した時の、長ったらしいんだけどこうでないと雰囲気出ない感じを思い出しましたよ。
しかし主人公の少年が成長したと思ったら、どうしようもないヘタレになっていたのでビックリした。なるほど、これは苦悩の日記だわ……。一番存在がミステリーで活躍してたのは神父様だったね。こっちが主役で良かったんじゃないの。こちらも別名を持ってたりして、海賊の人と並んでモンテ・クリスト伯を思い出したわ〜。
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