"適性階級でパワーアップ!"『トータル・リコール』
レン・ワイズマンがバーホーベン監督作をリメイク!
核戦争後の地球。貧困層の暮らすコロニーから、富裕層の住むブリテン連邦へと労働に通う日々に飽き飽きしていたダグは、記憶を改竄し未知の体験をするサービス、「リコール社」に足を運ぶ。だが、そこで思いもよらなかった記憶が目覚める。実は彼は記憶を消されたスパイだった? 美しく優しかったはずの妻が突如変貌し襲いかかる。自分の正体とはいったい?
ご存知シュワルツェネッガー主演作のリメイク。主演はコリン・ファレルだが、監督がレンズマンなのでケイト・ベッキンセールとビル・ナイという『アンダーワールド』組が集結。ベッキンセールがシャロン・ストーンの演じた元妻役。しかし……なんかごつい! 登場シーンのパンツ姿の下半身がムチムチではないか。もともとナチュラルな体格が、実はこれぐらいなのか。レザースーツで吸血鬼役の『アンダーワールド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120302/1330684614)シリーズでは相当ウエイト落としてるんだなあ。バンタムに絞り込んでいた格闘家が、適性体重のフェザーに上げて来たような肉体の密度。ジェシカ・ビールとは体格差あると思ってたのに、全然変わらないんだから驚いたよ。
筋は中盤ぐらいまではオリジナルとほぼ同じで、チラチラとオマージュも見せる。まあここらへんはファンサービスというところかな。いかにもビジュアル先行で、『ブレードランナー』以降の未来世界描写をすし詰めにしたような映像。貧困層の住む荒廃した地域に未来的なガジェットが林立する様をまず見せて、巨大な「フォール」というハッタリ充分の道具でもって、富裕層の住む地域の本当の未来ビジュアルにつなげてくる辺りの構成がうまい。いきなりピカピカの未来見せられてもついていけないかもしらんしな。未来シーンのエアカーチェイスと、エレベーターパニックのシーンは立体的な迫力も充分で、ここだけでも3Dで観たらどんな感じだったか気になるところですよ。
しかし、いかにもビジュアルを撮りたくて作りたかったようには見えるのだが、あのロボット兵士のビックリするぐらいのショボさには驚いた! めっちゃ弱そう! パワードスーツ的なものを来て顔を見せている兵士も登場してたので、「あ、あのロボットも実は中の人がいるのか」と誤認してしまいそうになったよ。「こいつが5万体いるぜ!」とぶちあげられるし、実際にコリン・ファレルを追跡するところではそこそこタフなこともわかるんだけど、クライマックスの最大の危機を煽る存在がこいつなのには驚いてしまった。鉄パイプかなんかで殴ったら、頭が取れて飛んでいきそうな雰囲気が丸出しなんだが……。
クライマックスで要人警護用らしき黒いバージョンが出て来て、こいつはさすがに強い!かと思いきや、ギャグとしか思えないやられ方で沈んだのには笑ったね。
やっぱり中盤まであんだけシナリオ踏襲してるんだから、今作でも火星を解放すべきだったと思うよ。オリジナル展開になってからが急速にしょぼくなっていくからビックリ。「フォール」も、単に世界設定を見せる小道具としてチラッと見せるだけならカッコいいのに、クライマックスの舞台にまでさせてしまうから、その雑さが際立ってしまう。ビル二つ分ぐらいの大きさに見えるが、これであの弱そうなロボットを送られるのの何が大変なのか、まったくわからないし、そもそも一回で5万も運べるのか? だいたい普段の労働者移送からして、万単位ぐらいで何往復もしてたのか?
実働役としてベッキンセールが頑張っていたのだが、悪の親玉が自ら登場してくるのもしょぼくなる一因。安全なところにいたはずの黒幕が、別に劣勢でもなんでもないのに表舞台に出て来るのはまずい。組織のトップのはずが「自ら指揮を執る!」とか言い出すが、こうやって悪役が一人で色んなことを兼任しだすと要注意。「こいつさえやっつければ万事解決だ!」ってことにしたいから。ボス、フォール、ロボット兵士を爆弾一つで吹っ飛ばすためにわざわざ一カ所にまとめたようなひどいシナリオで、このやっつけっぷりがさすがはカート・ウィマー脚本だ! やっぱり彼は『リベリオン』を残して伝説として去るべきだったと思うよ。
そして相変わらずの革命ごっこ大好き脚本には、最近流行のこの言葉を贈るとしましょう。
「革命を描いてるのに、民衆がまったく登場しないなんて〜!」
えっと、主演に関してまったく触れませんでしたけど、別にいいよね。これを観るぐらいなら『レポゼッション・メン』の方がずっと乗れるな。
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