"世は滅べど人は生きる"『クラウド・アトラス』
ウォシャウスキー兄弟久しぶり! 今は姉弟か。
遥かな未来、星を見上げながら、その男ザックリーは、六つの物語を語り始める。時空を超え、遥かな過去に遡り、魂を共有する人間たちの物語を……。
『スピードレーサー』は観てないけど許されよ。『V・フォー・ヴェンデッタ』以来ですね。そんなフィルモグラフィを振り返ってみると、あ〜『バウンド』と『マトリックス』の一作目面白かったな〜、と懐かしく昔を思い出すのでした。
6編のエピソードを交錯させつつ進むので、長い割にはハイテンポ。後半は、全エピソードがクライマックスになるので、自然と見せ場の釣瓶撃ちになってくる。時間軸交差したオムニバスってことで、ちょっと『呪怨』ぽい作りだな。おかげで基本は退屈しないのだが、何か面白いかと言われると、うーんと唸ってしまう。
オモシロ特殊メイクで性別や人種まで変えて登場するメインキャストを捜す遊びや、各エピソードでつながる点を探すなど、ちょっと参加型パズルのような楽しみがあるのだが、その分各エピソードが薄く、バラバラでやるとどれも食い足りないであろう。一編一編が、過去にあった映画のいいとこ取りのようにどれも見え、その上でオリジナリティがあるかというと別に……という感じ。そこも踏まえての実験作で、まあ多分試したかったことはそこそこ成功したのだろう……。
色々な時代に生まれた人間が、また別の人間に生まれ変わり、世界はより良く変わって行く……のではなく、地球ほぼ滅んでるじゃねえかよ! 社会やシステムが悪くなっていくのと、人間の生まれ変わりがまるで別のファクターのようになっていて、前者は性悪説、後者は性善説で解釈されているのだな。それはなかなか都合のいい話であるが、実際はそれらは不可分なもので、社会や文明が滅びる時は一蓮托生なのではないかなあ。その点で言うと、最後のエピソードだけがいかにもぬるいし、その手前の絶望的社会を描いたソウルのエピソードが突出して恐ろしいかというと、これも弱い印象。この未来世界の革命描写は、『V・フォー・ヴェンデッタ』から全然変わってない浅い感じで、ビジュアルも『マトリックス』撮った監督とは思えないしょぼさであった。実は予算が厳しかったのかな。最後の時代の話でも、宇宙船が飛び立つシーンがないんだからな。『第9地区』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100414/1271246089)かよ!
まあそういった甘っちょろさも含めて、メルヘンだな、と思いつつも別に嫌いな映画ではないです。ジョウ・シュンも観られたし、ヒュー・グラントの悪役も良かったね。しかしまあ、この姉弟の映画には、今後もあまり期待出来そうな気はしなくなった……。
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