"夏だ! 映画だ! ヒーローだ!"『アベンジャーズ』(ネタバレ)
ヒーロー大集合映画!
ひそかに進行していた「キューブ」の研究に突如異変が……。「シールド」基地内部で起きる「キューブ」の暴走。次元の扉が開かれ、異なる宇宙から、かつてソーと王位を争った邪神ロキが侵入する。キューブは奪われ、護衛についていたホークアイまでもが洗脳され、敵の手に落ちる。ロキの目的とはいったい? キューブに秘められた巨大な力の危険さに対抗すべく、ニック・フューリーはこれまたその巨大な力から凍結されていたプロジェクトを起動させる……!
一応、全作品劇場で観たし、『キャプテン・アメリカ』以外はソフトも持っている。
近作の感想。
『アイアンマン2』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100617/1276701942)
『マイティ・ソー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110711/1310294131)
『キャプテン・アメリカ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111016/1318775742)
ネタバレありです。
ストーリー的に一番重要なのは、やっぱり『マイティ・ソー』であるな。今回はロキがメインの悪役で大活躍。見た目弱そう、頭こそ切れるものの性格の幼稚さがそれをマイナスしてしまっているという典型的な小物キャラなんだけど、その執念こそが恐ろしいんだよね。ジョジョ第四部のようなコンセプトの悪役で、謎の軍団「チタウリ」を地上に出現させるべく「シールド」に挑戦してくる。本部襲撃で幕を開け、いきなりホークアイを洗脳してしまう! やはり神としての力は侮れない。ホークアイは映画シリーズでは事実上ここで初登場のはずなんだが、やっぱり『ソー』のカメオ出演で十二分に実力者アピールが出来てたよね。それがあっさりやられてしまい、大変な事態ですよ。
冒頭から、今までは要所要所で出るばかりだったサミュエル・L・ジャクソンが引きずり回されっぱなしで、それが否応なしに緊急事態を盛り上げる。この「シールド」の人たちが余計なことをしなければそれで済んだと思うんだけど、今回のニック・フューリーは中間管理職的な色合いが強い。この実験も「アベンジャーズ計画」も上層部からの指令で始めたりやめさせられたりで、現場の苦労は絶えない。自らが招いたこと、という意識を抱きつつ、ヒーローの招集を開始。
正直、ソーさんの再登場の理由辺りは強引過ぎて苦しいなあ、という感じがしたものだが、浦島状態のキャップさん、ハルク、アイアンマンが集結して来るくだりは面白かった。みんな簡単に言うこと聞くようなタイプじゃないけど、それぞれ別々の理由から現時点での協力だけを取り付けて来る。この時点で一応形としてはヒーロー軍団が集まるんだけど、ここではまだ全然アッセンブルじゃなくて、中盤を経てやっとチームとなる。
今回のハルクさんは役者がマーク・ラファロで、隠遁状態の悲哀が良く出ていたなあ。自殺未遂さえも語る、もはや何もかも諦めたような風情。ところで、時々エドワード・ノートンにキャストを脳内補完して観ていたが、ノートン先生はやっぱりこんな他のヒーローと仲良くしてくれないよね。製作会社としては扱いづらい人で、「協調性のある人を」なんてコメントも出ていたが、それはリアルな側面だけでなく、今回のストーリーのコンセプトにも合っていなかったということだろう。絶対スカヨハ無視して逃げてるし、ダウニーJr.とも喧嘩になりそうだしなあ。もちろん、そっちのバージョンも見てみたかったところだが……。
中盤、ロキを捕まえて飛行空母に監禁。この辺りからキャラ同士の絡みが加速。ファンサービス的に社長とハルク、社長とキャップさん、ウィドウとロキなど、単発作品ではできない組み合わせの会話シーンをこれでもか、これでもかと繰り返す。ここらへん、各作品を追っていればファンにはたまらない内容になっていて、しかもファンサービスに留まらずここを踏まえて後のクライマックスにつながる仕掛けにしっかりとなっている。
この中盤の仕掛けがまさにこの映画の肝になっていて、ファンムービーとしてもがっちり満足できる設計になっている。このそつのなさは見事。
ただまあ、向き合って会話するばっかりのシーンが延々と続くので、正直だれました……。アクション映画においては会話は移動しながらやること、という法律を誰か作った方がいいと思う。全作品観ていたのに正直長すぎた。シナリオ的にロキが何かやりだすまではこの状態が続く、という待ち状態だし、そのロキの狙いがハルクを暴れさせることってのも、さすがに脈絡なさすぎるだろう。観た時は劇場もほぼ満員だったのだが、周囲の客が続々とトイレに立つのにもびっくり! いやまあ、かったるいのはわかりますが、一応内容的には聞いとかないとあとでもったいないんですけど……。
ここでホークアイが襲撃し、なんと矢一本で空母を撃墜しそうになってしまうのには驚いた。今回は「シールド」の見かけ倒しっぷり、弱々しさがどんどん明らかになっていく展開で、そこも後々「アベンジャーズ」の独立性につながってくる。ロキとかチタウリ以前に、内部が脆弱すぎるのだよね。
周りの不真面目さに一人テンパり気味だったキャップさんが、ここでみんなを見直していく展開は良かったね。まあ要は古風な人なんで頭も堅いし、現代人とのカルチャーギャップにイライラしていたわけだが、だからこそ彼ならではのリーダーシップも発揮できるわけだ。
「シールド」の通常戦力は無力化され、コールソンも倒されるが、それをきっかけにヒーローたちは結束の意思を固めることになる。ホークアイも帰ってきたし……。ホークアイは悪役時間長い上に素手でスカヨハにKOされるという醜態! これはボーンシリーズ(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120813/1344829990)もスカヨハに譲った方がいいんじゃないでしょうか! その分、ここからの見せ場は多くてちょっと安心しました。
マンハッタンにチタウリの大軍団がついに襲来、ということだが、しかしこのチタウリ軍団、最後までピンとこない存在ではあった。「最強の軍団」とか台詞で言ってるが、何が強いのかよくわからないし、ほんとに未曾有の危機なのかというと微妙な……。その後にぶっ放された核ミサイルの方がよっぽど危険じゃない? と思ったらまた「シールド」か! ニック・フューリーも上層部とまるで『踊る大捜査線』みたいなやりとりしてるし、この組織、ほんとにダメですね。
巨大な魚は何か泳いで進行方向上の建物を壊すだけ、という印象だったが、むやみに近接戦闘挑んでくる一般兵は結構面白かった。両足タックルでホークアイをテイクダウンするあたり、うけてしまったよ。
近接戦闘ともなれば、キャップさんの盾が大活躍だ! と思ったが、まあだいたいブラック・ウィドウと同じぐらいの活躍でした。キャップさんは民間人や警察に逃げる指示するとか、そういう方向に力を発揮するんですよ。ブラック・ウィドウは今回はまったく妖艶さとかエロいものは感じず、代わりに汗まみれになり息を乱しながら素手で戦うシーンの健康的なお色気が印象に残りましたね。何というか、こう、くんずほぐれつ肉弾戦したい感じの……。
中盤のネタ振りがきちっとはまっていくラストバトルは観てて気持ちがいいし、ハルクさんの大活躍もすごかったね。しかしもう少しチタウリ軍団が強かった方が面白かったかな。全体的にロキさんに劇を背負わせすぎで、空母撃墜もチタウリ軍団の尖兵にやってもらっても良かったね。ホークアイが矢が切れて、アイアンマンも火器を消耗、キャップさんが腹をやられ、ハルクが集中砲火を受けて釘付けにされるあたりのピンチさがもう少し続くようなバランスならもっと緊迫したのに。そして包囲されて喉元に槍を突きつけられ、悔しげにうつむくブラック・ウィドウ!(そんなシーンはありません)
六人がついに集結するシーンなども良かったのだけれども、見せ場はどこもかしこも予告編で見せられてたのがかなりマイナスに作用してしまったなあ。最後の最後のいいところまですでに知っているという……。
そんなこんなで見せ場よりもあちこち入ってる細かいネタの方が面白かったな。結局「アベンジャーズ」は組織の手を離れる。核兵器や「キューブ」を使った新兵器と同様、彼らもまた強大すぎる力を持っていて、それは「シールド」の、政府の手に渡しておいてはならないもので、あくまで自由意志で行動していなければならない。またより強大な敵が現れた時に、必ずや集結する……! 最後にざっとだが描かれた市民の声なども含めて、テーマ的にも完結。
それだけでも観るに足る一本の映画を何本も前振りに費やして、絶対に失敗の許されなくなった超大作を、ファンサービスで穴をカバーしつつ見せ切った、まさに究極の商業映画であったね。下手すればカオスに陥ってもおかしくない企画なのに、エンドロール後のおまけも含めて、痒い所にことごとく手が届く圧倒的な完成度とそつのなさでまとめる。その分、予定調和的でもあり、気持ちのいいところに落としてくれるであろう安心感が逆に物足りないところでもありました。『エクスペンダブルズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101019/1287461649)に期待して少々物足りなかったのと同じ印象。
まあその分、三年後の次作では今度こそ集結の過程を省いて、より突き抜けたものを見せてくれるのではないでしょうか。
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