"あなたが考えてることは、きっとあの子も考えてる"『僕の大切な人と、そのクソガキ』
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離婚して7年、元妻のお情けとお節介でパーティに連れ出されるという屈辱を味わうジョン。だが、そこで出会った同年代のモリーと言う女性と思いがけずにいい雰囲気に。さっそく付き合いだした二人だが、モリーは夜遅くなるとそそくさと帰り、何か隠している様子。跡をつけて彼女の家を訪れたジョンは、そこでモリーの息子、もう21歳になるサイラスと出くわしてしまう。
マリサ・トメイの恋愛ものと言えば、クリスチャン・スレーターと共演した『忘れられない人』という薄っぺらい難病ものラブロマンス(しかもスレーターが顔色いい癖に心臓病野郎だよ! と言いつつDVD持ってるが……)。しかしあれから17年、ブサメンのジョン・C・ライリーがワクワクしながら付き合い出したマリサ・トメイは、すでに子持ちになっていたのでしたああああああああ!
離婚以来、半引きこもり状態だった男が、新たな出会いに人生そのものの希望を見出すものの、どっこい思わぬおまけが……という話。もう40過ぎた男だし、人間的にも大人だから、彼女にもう21歳のでかい息子がいるのを知っても、内心はぎょっとしつつも受け入れようとする。「オープンで寛容」というのがこの主人公のセルフイメージと理想像であり、それを正しいと信じて。だが内心、不満とイライラは溜まるし、その上、この息子への不信感が募っていく。
最初はこの息子サイラスの本音は見えないのだが、次第に主人公の鏡像のような心理が見えてくる。邦題を反転させると「僕の大切なママと、あのクソ野郎」ということにでもなるか。
新しい関係と、今現在の関係の折り合いがつかない、というのは実に普遍的でいかにも「あるある」という問題でもあり、邦題の「クソガキ」は、キャラクター性だけではなく、サイラスを邪魔者として見る主人公の心性の現れでもある。主人公目線に立ってみれば「敵」となるわけだが、裏を返せば当の彼も元嫁の邪魔をしてばかりで、その新旦那にジト目で見られてるのに全然気づいていないあたりが面白い。新旦那も大人だし、妻が元夫を気にかけてるのを知ってるから文句も言いたくない。
最初は穏便に振る舞い、徐々に策を弄し始めるサイラス=ジョナ・ヒルの行動がいちいちおかしいのだが、彼とて別にモンスターではない。もっともっとわがままにもなれたはずだが、それができるほど子供ではないし、かと言ってすんなり受け入れられるほど成熟もしていない。そのことは母親マリサ・トメイの台詞ですぐに説明されていて、実はそれが全てなのだよね。主人公がそれを受け入れるのにはまた時間やすれ違いを要するのだが、解答は最初から提示されている。二人とも、マリサ・トメイに好かれたいし、彼女に幸せになって欲しい。そうなれば、やることは一つだ。
大人になるのは難しいし、大人になってもそう振る舞い続けるのはまた難しい。この題材ならもっと戯画的にもできたはずだが、真面目な内容だったなあ。派手なエピソードを盛り込まないからこそ、話し合いわかりあうことの難しさと大切さが際立つ。子供がもう少し若くて、主人公がジャック・ブラックなら、血で血を洗う争いになっていたかもしれん……。地味ながら実力派キャストの魅力が如何なく発揮された秀作でした。
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