"そして形骸だけが残った"『デッドエンド 暗戦リターンズ』

デッドエンド 暗戦リターンズ [DVD]

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 ジョニー・トー監督作、『暗戦』の続編。


 ホー刑事に突きつけられた新たな挑戦状。美術品盗難の謎を追い、大企業を盗聴していたホーの前で、窃盗犯の男が接触してくる。白昼堂々、高層ビルの屋上でホーを指名する謎の男。美術品と引き換えに多額の現金を要求する男だが、その真の目的は杳として知れない。弱みを握られたままの大企業の合併取引が迫る中、男とホーのゲームが始まった……。


 一作目は、ジョニー・トー作品でも最もお気に入りの一本なのだ。謎の人物である犯人が、ラウ・チンワン刑事に挑戦してくるという前作と同じ構図。
 しかしながら、イーキン・チェン演ずる相手側のキャラクターが、バックボーンから性格付けから描写不足過ぎて、前作において重要な要素だった追う者と追われる者の共感や交流が生まれない。逆に前作を逆手にとってミスディレクションを仕掛けているのかと思いきや、何も描かれないまま中途半端に終わってしまう。間に立つケリー・リン演ずる企業側のキャラクターも魅力が薄く、またその企業の体質に対して明確な批判もないために、ここでも対決の構図が機能しない。イーキンはなんでチンワンに仕掛けてるのか、その目的はなんなのか、一切が前作をなぞった雰囲気だけでしかないので、ラストも形だけ同じにしても劣化感ばかりが引き立ってしまう。
 前作でアンディ・ラウからにじみ出ていたウエットな部分が根こそぎ飛んでしまっているので、それならばもう一つの売りであるゲーム性を強化して欲しかったところだが、そちらも今ひとつ。


 香港の街並みを縦横に駆使して撮られた映像は素晴らしく、スケール感があるのだが、クライマックスで肝心なところをCGの処理でごまかしてしまったところが痛い。冒頭のビルの屋上から、最後もそこに戻って来るスマートな構成で、意外な登場でドヤッ!と驚かす……という趣向なんだが、最初のシーンがビルの高さを強調して緊迫感が強いだけに、逆に拍子抜けしてしまった……。いかにも合成したような映像で平べったいんだもんなあ……。


 んんんん〜、なんだこりゃ、全然いいとこなしではないか。相変わらずスタイリッシュにカッコ良く、また今回もフード理論ありなんだが、悪役のキャラが立ってないのですべっている。上司との絡みなど、シリーズ物ならではのつながりは楽しめる……と言いたいとこだが、前作に続き登場のラム・シューが別の役だったりするあたり、うーん……。


 いきなりのDVDスルー、今まで観なかったのだけれど、まあそれも納得という出来であった。トーさんにも外れはありますよ。ラウ・チンワンのモテぶりに萌える映画として思えば、まあ……。
 第一作が再販されますよ!↓ こっちは傑作ですから!

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