"成功者の末路"『盗聴犯 狙われたブローカー』
夏の香港映画祭り、その二。
若くして『地主會』の一員となった株ブローカーのロー。だが、その行動を逐一監視し、盗聴する謎の男がいた。ローはその尾行を振り切ろうとしたことから事故を起こし、警察のマークを受けることになる。保安課のホーはその動きに不審なものを感じ、やがて謎の男ジョーと出会う。彼の狙いこそ『地主會』。香港の経済界を裏で操る組織だった。
原題にはきっちり「2」の数字が入っているのだが、監督、メインキャスト、題材が同じなだけでまったく違う作品という、ある意味斬新な続編。「1」(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120811/1344655574)であの人やあの人がむにゃむにゃなことになったのにも関わらず、平然とチラシに載っているので首をひねっていたのだが、そういうことだったのか……。さらに、同じ監督でラウ・チンワンでもまったくタッチが違い、ちょうど同じジョニー・トーでも『ヒーロー・ネバー・ダイ』と『暗戦』ぐらいに異なる作品になっている。
まさにその『暗戦』ぽいスマートな作りで、ストーリーもちょっと似ておるね。パート1よりさらに株取引と金融のテクニカルな部分に踏み込み、先を読ませずラストまで突っ走って行く。ラウ・チンワンが今度はブローカー側になり、ルイス・クーが一人で刑事、ダニエル・ウーが両者を翻弄する「盗聴犯」役ということで、三つ巴の複雑な展開に。しかし今作もスルスルと伏線を回収し、落としどころもあくまでスマート。香港映画らしいカオスっぷりを極力抑え、ある意味、勧善懲悪な展開に。
同じ金融と盗聴と言う題材を用いながら、まったく違う映画を作ろうと言う意気込みが見られ、まったく別の作品ながら二作共観るとより深い楽しみ方が出来る、という意味でやっぱりシリーズである作品群だったのかもしれないな。
前作はルイス・クーが色々と美味しいところを持って行っていたが、今作はダニエル・ウーがたった一人で両勢力を手玉に取るカリスマ的存在を演じ、大いに株を上げた感じ。だが、それを影で支える役回りなのにも関わらずモテモテなチンワン……。相変わらずのチンワン力とでも言うべきパワーは健在で、今作のムショに入っちゃってるカットのきょとんとした顔でおばさまファンから笑いが起きていたが、あれも『暗戦』の新聞記事見てあれっ?となったカットに通じるなあ。
しかしまあ、金融取引に関わった人間の成功、失敗、二種類の末路はどのみちろくなものではなく、マネーゲームに奔走する資本主義社会への批判もこもっている。やはり二作合わせて観るとより面白い作品だった。
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