"デンマークVSアフガニスタン、アメリカVSアフガニスタン"『ある愛の風景』

ある愛の風景 スペシャル・エディション [DVD]

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 デンマーク映画。『マイ・ブラザー』のリメイク元。DVDで鑑賞。


 銀行強盗で服役していた、厄介者の弟・ヤニック。デンマーク軍人である、人格者の兄・ミカエル。美しい妻・サラと二人の娘を持つミカエルは、弟の出所の出迎えに行った後、アフガニスタンへと飛び立つ。出所したはいいが、父に疎まれ兄嫁にも嫌われているヤニックは、家族の中に入ってもうまくいかない。
 だがある日、アフガンでミカエルの乗ったヘリが撃墜されたとの報が届く。悲嘆に暮れる家族を支えるヤニックは、やがて子供たちやサラとも心を通わせるようになる。夫の死という悲劇から、家族は必死に再生していく。
 ……だが、ミカエルは死んではいなかった。アフガンで捕虜となり、そこである体験をした彼は、別人のようになって舞い戻る……。


 『マイ・ブラザー』の感想。
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100609/1276095974


 順番を逆に見たわけだが、良く出来てるなあ……。リメイク版もほとんど手を加えず、筋立てや多くの演出もそのままにしてある。いじる余地がない……といいより、下手にいじって完成されてる要素を壊す必要がない、というところか。役者陣の熱演も同じく。


 唯一と言っていい違いは、アフガニスタンで捕虜にされる兄が、「デンマーク軍人」であるところだ。『マイ・ブラザー』において「アメリカ海兵隊」であったのとは、まったくニュアンスが違う。
 国連の治安支援部隊として数百人単位を派兵しているデンマーク軍の士官である主人公と、共に捕らえられる無線技師はその戦争に大きな意味を見出しておらず、捕虜となったことも「ひどい災難に巻き込まれた」という意味合いでしかない。
 リメイクにあたって、『マイ・ブラザー』では、アメリカとアフガニスタンの関係を意識し、新たなシークエンスを付け加えている。捕らえられた主人公は、もう一人に対してあくまで上官として振る舞う。「敵地」においても心を強く持ち、アメリカへの忠誠を失わない事を自分にも部下にも求め続ける。やがて来る悲劇に、それは強烈なもう一つの意味を与える。


 うむ、やはり両方見て良かったな。オリジナルも素晴らしいが、リメイク版も押さえるべき要素と、積極的に補強するべき要素を見誤たず、手堅く仕上げてある。
 まあやっぱりハリウッド映画の、大仰な演出を見慣れてる人は『マイ・ブラザー』の方がおすすめ。弟の方に、二人の娘(特に上の方)が懐く過程などもうまく描いてるし、後発の強みが発揮されている。
 あとはコニー・ニールセンナタリー・ポートマンのどっちが好きかで選べばいいと思うよ! オレはどっちも好きだけど!

マイ・ブラザー [Blu-ray]

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