『あなたに贈る×(キス)』近藤史恵
- 作者: 近藤史恵,今日マチ子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2010/07/28
- メディア: 単行本
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唇を合わせることで唾液により感染する奇病の発生。かつて愛の行為だったキスは忌み嫌われ、禁じられる。だが、外界から隔絶された全寮制学園で、一人の女生徒・北嶋織恵がこの奇病によって死ぬ。彼女の後輩だった桜井美詩は、悲憤から密かに犯人……奇病の感染者、あるいはキャリアを探し始めるのだが……。
50分ぐらいで読めてしまうのだが、中身は濃い。奇病の特性の設定と、犯人探しの流れ、死んだ少女の本心がじょじょに明らかになっていく様ががっちり噛み合っている。
近未来に時代を設定したがゆえに、過去……キスの許された我々の暮らす現代がややノスタルジックに描写される。均質化されリベラルになった現代と対比される形で、旧時代の価値観があぶり出される。作中の時代の価値観、そこにある人との距離感に慣れ切った主人公は、事件の謎を追う中で、過去を知りその価値観を知ることで、それまで見えていた事象が反転する事に気づく。
近藤史恵の作品は、常にこの価値の反転を提示し、自分と他人との関わりを我々に問いかける。今作もその例外ではない。
おお、これは『ニュー・シネマ・パラダイス』ですか……と思ったあるシーンが象徴的。作中の人物にとっては過去の象徴であるキスシーンが、我々にとっては日常ありふれたものであり……しかしかつては不浄なものとして教会では忌み嫌われていたものでもあるということを思い起こさせる。秀逸。
ちょっと固いことばかり書いてしまったが、耽美要素もぎっしり! バックには花が咲いてるぜ!
ふふふふふ、今回も堪能した。
ちなみにラストはまたまた決めたよ、どん引き展開! ○○さんはいい人そうなのに気の毒……とかちょっとでも思ってしまってた奴はキスされて死になさい!<追記>出版元の理論社が倒産! まだ買ってない人は、早めに手に入れた方がいいですよ!
- 出版社/メーカー: 角川映画
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