『砂漠の悪魔』近藤史恵

砂漠の悪魔

砂漠の悪魔

 2010年は近藤史恵イヤー! いや〜、いったい今年は何冊出すんだ?


『エデン』http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100401/1270117054
アネモネ探偵団』http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100614/1276441776
『薔薇を拒む』http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100701/1277910335
『あなたに贈る×(キス)』http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100927/1285576161


に続き、もう五冊目ですYO!


 些細な気持ちで仕掛けた悪戯により、親友を死なせてしまった広太。悪意の連鎖はさらなる悪意を呼び、平凡な大学生活から一転、事件の真相を知ったヤクザの恐喝によって、中国へと渡ることになる。反抗も許されず運び屋として仕事を果たす中、日本人留学生の鵜野と出会った彼は、西部のウイグルを目指すことに……。


 近年、多くのジャンルにその振れ幅を広げてきた近藤史恵だが、今作と、全く違うジャンルである上記四作とも、通底するテーマは変わらない。言葉にすると陳腐だが、複雑な人間の感情に裏打ちされた人間の行動の意味は、他者からはうかがいしれないというところだ。今作では見せかけの友情を嫌う主人公が、友人を自殺へと追い込むところから始まる。あるいは『青葉の頃は終わった』のように、この真相を他の友人が追う、というストーリーでも一本になったかと思うが、今作は思わぬ変転を見せる。


 舞台は中国・北京へと移り、さらに遥か西部、ウイグル自治区へ! 同じ日本人ながらその環境に適応した鵜野を鏡とし、異なる人種、文化、気候……全てが日本と違う大陸で生きる中、主人公の内面には大きな変化が起こることに。タイトルの『砂漠の悪魔』との邂逅も然りだ。
 良く書けてるが、このカルチャーショックネタなら篠田節子の方が読み応えあるかなあ。近藤史恵と言えば、上記テーマに対し、変わらないはずの立ち位置から思わぬ視点を導入することで、傍から見える人間の行動の意味が丸ごとひっくり返ってしまう、あの価値観の反転が持ち味だよな……と思ったら、最後はきっちりそちらに着地してみせる。


 今回も外れなし、一気読み必至だ。

青葉の頃は終わった (光文社文庫)

青葉の頃は終わった (光文社文庫)

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