横溝テイストはどこ行った!?『ミレニアム2 火と戯れる女』
パート3と連続公開!
第一作の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100210/1265815121
あの事件の後、国外へとその身を隠していたリスベット。だが、舞い戻った彼女に、復讐者の魔の手が迫る。一方、大規模な少女売春を斡旋する組織とその買い手を追求していた「ミレニアム」のメンバーたち。だが、証拠を抱えた記者が射殺され、現場にはリスベットの指紋のついた拳銃が残されていた。一人、彼女の無実を信じるミカエルは行動を起こすのだが……。
今回は、リスベットの過去篇。一作目のラストで明かされた父親の存在が、大きな意味を持って浮かび上がる。
しかしな……孤島に潜む血族の因縁を扱った前作の、横溝正史作品のようなムーディーさは影も形もなくなり、舞台が都会に移ったことも相俟って、普通のサスペンスものになってしまった。さらに、主人公の血縁と言う、キャラクターを設定している要素が主軸になることで、ストーリー自体の構成が単純になりすぎてしまっている感あり。どうせあいつが犯人なんだろ……という……。
血縁関係ともう一つ絡むのが、ロシアから亡命してきて、スウェーデン政府に保護された謎のスパイの存在。二つの謎が交わる時……う〜ん、なんか都合良くねえ? そんな簡単に一本につながっちゃっていいの?
だいたい、その亡命スパイという設定がいかにも大袈裟で、いかにもキャラクター小説的な安直さばかりが感じられる。それを国家が保護している……というのは現実の話として語れば「陰謀論(笑)」で片付いてしまうようなうさん臭い代物なんだが、お話の中ではそれは事実。庶民の味方、権力に立ち向かう清廉なるマスコミが主人公なんだから、正しきジャーナリズムが暴く巨悪はそういう風に設定されるのが当然か。
巨漢VSボクサーで、パンチが効かないと見たボクサーがチャランボをかます辺りは笑ったな。それでもつまらなくはない、水準は満たした作品なんだが、急にありきたりな話になってしまった。この筋立てなら、本で読んだ方が多分面白い。
さて、パート3は法廷劇? 新機軸に期待したいところだが……。
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,山田美明
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