K-1救済プログラム"MASATO"プラン対応テストタイプ・コードネーム"HIROYA"

2009/12/31……

助手
「だ、ダメです! 計算外のスピードと正確さです!」

博士
「ありえん! 一撃の威力ではこちらが上なのだ! 押し返せ!」

助手
「通じません! 回転が……止まらない! どんどんポイントを奪われて行きます! これでは最終防衛システム"HIIKIジャッジ"も発動不能です!」

博士
「こ、こんなバカな事が……!? 私の提唱したMプラン、その最高傑作であるはずのタイプHが、負けるだと……!」

==============

モニター画面……

アナウンス
「3-0で、勝者、青、野杁!」

HIROYA
「こ、こんなカスみたいなやつに、このHIROYAが!」

==============

博士
「ヘナッ……!」

助手
「は、博士ーっ! しっかりしてください!」



博士
「わたしはK-1最後の救済策として、”MASATO”プランの導入を、ここに宣言します!」(*)

 組織に多大な利潤をもたらした魔裟斗の後継を生み出すべく、某博士によって、一つの方法論が提唱された。ルールに適応したポイントを稼ぎやすいファイトスタイルの育成と、身体能力の強化。ジャッジとレフェリー、マッチメイクによるプロテクト。マスコミ対策や、ファン向けのキャラクター作りのノウハウ。それら全てを網羅しての早期育成。
 すなわちそれが「Mプラン」……魔裟斗をモデルケースとし、次代のスターを養成するためのプログラムであった。
 「Mプラン」を実際に走らせるための育成の舞台として、組織はプロジェクト"Koshien"を発動。数体の先行試作モデルとともに、本命に位置づけたテストタイプ……「タイプH」を投入した。一年目、わずかな計算ミスにより決勝での敗退を招くも、翌年はシステムの機能をフルに発揮し、上々の成果を残す。
 2009年大晦日、魔裟斗引退試合の日……。三年目もまた、死角はないはずであった。だが……。

(*)博士の声は、池田秀一のイメージで読んで下さい。

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黒服1
「困りましたね……」

博士
「ビクッ!」

助手
「タラーッ」

黒服1
「まさか準決勝敗退とは……。ここまで"タイプH"ことHIROYA君に、我々組織がしてきた投資は、半端な額ではない……それがこの程度の成果では、困るのですよ……」

助手
「ヒッ……た、助け……」

博士
「た、頼む……。もう一度、チャンスを……!」

黒服1
「おや? 何をそんなに怯えておられるのです? フフフフフ、そんなに心配しなくても結構。敗れたとはいえ、貴方がたと"タイプH"が多大な貢献をしてくれたことは間違いありません。すぐにどうこうということはありませんよ……」

助手
「ほっ……」

黒服2
「安心するにはまだ早いぞ? 計画に遅延は許されん。プロジェクト"Koshien"など、ほんの前座に過ぎん。年が明ければ、いよいよライト級のトーナメントが開幕する。"タイプH"も、そこに投入する」

博士
「な、なに……!? いよいよか……!」

黒服2
「すでにプロジェクト"Koshien"を卒業した"ケースS"や、"U型1号機”と"2号機”の投入も決定している。キック団体の選手や総合格闘家相手に、いよいよ本格的な実戦テストを行う。そこで、何が何でも勝ってもらわなければならない。わかるな……?」

博士
「あ……ああ……」

黒服1
「もう失敗は許されませんよ。もしそこでも敗退すれば……フフフ、野杁君強かったですねえ」

助手
「そ、それは……」

黒服1
「そうです。計画に遅れは生じるが……彼を”タイプN”として抱え込む事になるでしょう。タイプHは用済みだ。そうならないように、結果を出す事ですね。では」

助手
「……フーッ。た、助かった……。何とか首がつながりましたね、博士。今回の負けは手痛いですが、次のトーナメントで勝てば……」

博士
「い、いや……勝てん!」

助手
「え!?」

博士
「このままでは……タイプHは勝てない!」


2010/7/5……東京某所

上松
「こ、このイケメンであるオレが! こんな地味な奴に打たれっぱなしになっているだと!?」

博士
「見ろ! システムMの方法論を、ドラゴン機関の選手に部分的に投入した"ケースUE"が敗北した! イケメン成分とパンチスタイルだけでは不十分なのだ! 所詮は"MASATO"の不完全な模倣に過ぎん! トーナメントの組み合わせごときプロテクトでは到底間に合わん。あれでは使い物にならん!」

石川
「こ、このナオキックが……オレの青春があ〜っ!?」

助手
「おお……石川が敗れました!」

博士
「Mプランの対象外だったが、石川こそが"M"の野心的部分をもっとも備えていた存在だったやもしれん……。だが、あまりにキックボクシングに適応し過ぎ、肉体も疲弊していた! "ケースS"の敵ではない……」

助手
「"ケースSAIGA"は、驚くべき進化を遂げていますね……!」

博士
「BM(ビッグマウス)因子を意図的に多量注入し、関西という環境において育成したのが幸いしたのだろう。突然変異的に能力を開花させたな。一撃の破壊力も昨年までとは比べ物にならん! 以前は見た目ばかりで、試合もしょっぱかったというのに……。一回戦、リザーブと無敗の"URAVE型2号機”と合わせ、プロジェクト"Koshien"の成功はこれで証明された!」

助手
「で、では我々のタイプHも……!」

博士
「いや! ケースSはスタミナとディフェンス能力に課題がある! 上半身が肥大しすぎ、スピードがついていっていない! U型2号機はあまりにも決定力不足! 遺伝子が1号機と分散してかぶっている分、華もない! まだまだ完全な成功にはほど遠い」

「そしてタイプH……! "M"も習得していたムエタイ式のディフェンスを身につけさせ、判定の際にダメージの印象で帳尻を合わせるため、パンチの破壊力を上げた。ここまでの勝利は、その方法論が噛み合っていたがゆえ! だが、充分かと思っていたスピードで、ノイリに上回られた。そして……!」

尾崎
「あ、当たらない……オレの必殺の回転技が……?」
松本
「うわっ!? な、なにが……起こったんだ……?」

助手
「く、久保強い!」

博士
「"Mプラン"の方法論のうち、フィジカルの分野は他ならぬ"MASATO"自身によって流出させられた! この久保という選手、その理論で徹底的に強化されている! さらにこの空間制圧能力……タイプHより3年先行しているとはいえ、なんという完成度だ! ある意味、理想型かもしれん……!」

「し、しかし、わからんのは……」

裕樹
「ぐふっ! うげっ!」
才賀
「な、何でやね〜ん!」

助手
「け、ケースSが、全く歯が立たない……! なんなんだ、この大和という選手の強さは……?」

博士
「くっ、わからん……! ペンキ塗りでバランス強化だと……!? 『ベストキッド』だと……? そんな非科学的な……! わからん……!」

「わかっただろう。二年後には野杁も出てくる! 今のままでは、タイプHは久保、大和はおろか、奴にも勝てん! こんなこともあろうかと、タイに留学させておいて正解だった……。政情不安と卒業を言い訳に、トーナメントを回避できたからな……」

助手
「で、では……!」

博士
「そうだ、勝負は来年に持ち越しだ……! その間に、タイプHを徹底的に強化する! 肉体! 速さ! 精神力! ベビーフェイス! 全てにおいてだ……。 まだだ! まだ終わらんよ! MASATOの後継者は、私のHIROYAだ!」

黒服1
(ふっ、まあお手並み拝見と参りましょう……)



 ……というわけで、いよいよHIROYAの大逆襲が始まりますよ、皆さん(笑)。
 もう完全に忘れ去られたかに見えたHIROYAでしたが、解説に起用されたりキザえもんに声かけてもらったりと、まだ辛うじて存在は認識されている。今年の甲子園勢の大活躍もあって、実力への評価もむやみに落ちてはいない。まだまだ浮上の目はあるはずだ!
 以前、提唱したVS石川、VS渡辺も、この二人がずっこけた今なら充分あり得るカード! まずはキザえもん同様、大人を血祭りに上げて復活だ!
 ある意味、キザえもんの活躍でハードルは上がった。HIROYAに課せられる試練も、今までとは比較にならないだろう。だが、勝たなければどのみち生き残れないのだ。勝って生き残れ、HIROYA

 え〜、なんでHIROYA応援のような記事を書いてるかというと……。いや、なんか手のひら返されてプッシュされなくなった選手って応援したくならないですか(笑)。見捨てられたエリートが泥をすすって甦る。結構いい話だと思うな。HIROYAがその筋書きを実現出来るか、見守っていきたいですね。


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