『夢魘祓い』牧野修

 ひさびさ、マキノさん。そう言えば『ネクロダイバー』買ってないな。


 平凡な高校生のカタルは、クラスメートでエキセントリックな美少女・比嘉コトノハとの接触以来、夢の中の戦いに巻き込まれる。最近起きている女子高生連続殺人の裏には、すべて夢が絡んでいる……夢の中にある錆域という世界から現れる怪物と戦うコトノハ。カタルは渋々ながらも協力するのだが……。


 世界観作りといい、さらっと描いているようでいて細かい描写といい、相変わらず上手いな〜という印象。定型をなぞっているように見せて外す心理描写は、人間というものに対する作者の誠実さを感じさせる。学園ホラーと言う題材だが、さほど少年少女向けは意識されていない。いつものマキノさん。終始、安定しているな。
 おなじみのグロ描写も、「夢」という題材の中で想像力の翼をフルに広げ、おぞましい世界を召喚してみせる。その悪夢の世界が両断されていくカタルシスも素晴らしい。


 売れたら続編、という感じなのか、結末で作者にはおなじみのラストを持って来たあたり、いささか座り心地の悪い印象を受けた。題材的には当然のオチだが、それが別に完成度を上げているわけでも下げているわけでもない、悪い意味での予定調和ではないが、また別のそれをなぞっているようにしか見えず、やや惜しい感じ。


 しかし、久しぶりに読んだらやはり面白い作家であった。


 ちなみに表紙絵は『幻覚ピカソ』の古屋兎丸。マンガとはまた違うタッチで、なかなか良い。こんな絵も描けるんですな。

MOUSE(マウス) (ハヤカワ文庫JA)

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幻覚ピカソ 1 (ジャンプコミックス)

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