"混沌なき、ようぐそうとほうとふ"『玩具修理者』

玩具修理者 [DVD]

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 小林泰三のデビュー短編の映画化。


 アンティーク・トイを扱うおもちゃ屋にやってきた、サングラスをかけた女。彼女は店員の少年に、おもちゃにまつわる不思議な思い出を語り始める。「小さい頃、家の近くに玩具修理者がいてね……」。「ようぐそうとほうとふ」というかけ声と共に、どんなおもちゃでも直してしまう玩具修理者。彼女はある日、階段から転げ落ちて死んだ赤ん坊である弟の修理を頼んだと言うのだが……。


 小林作品はグロいことをあっけらかんと語るドライな語り口がいいのだが、この映像作りは勿体つけ過ぎ。もっとさらっと、矢継ぎ早に見せて欲しいねえ。とにかくCGがいらん! 手元を暗くして見せずに雰囲気出す、低予算ホラー的演出の方が映えたと思うがなあ。もっとグロく! もっと激しく!


 原作小説の説明的な台詞をそのまま脚本に入れてしまっているのにも関わらず、地の文でねっちりと描写されたところは曖昧な映像に留めるあたり、センスはないけど大人の事情だけはきっちり守ってます、という弱々しさ、気概のなさばかりを感じてしまう。製作はチームオクヤマこと奥山和由だが、監督ははくぶん……誰? 今現在ググっても、もうどこにも存在していない……。
 原作の魅力は色々あるのだが、ラストに向けた精緻なミステリ的な叙述に対して、なしてここまでのグロ描写なの? なぜにクトゥルーなの?という絶妙なカオスさが素晴らしかった。が、そのわけのわからなさが緩いテンポに殺されてしまっている。


 47分の中編で本来は筋だけで面白い話なんだが、やはり原作の「おもちゃ」と「人間」を一緒くたにバラバラにしてしまう感性は、人がぽんぽんと死んでいくスプラッタホラーの乗りに近いので、わざわざ「心があるのか」とかいうそれっぽいだけのテーマを付け加える必要性を感じない。田中麗奈演ずるヒロインも、話してる内容が異常で頭がおかしいのではないかと疑われるような人物像として描かないといかんはずなのに、妙に甘いところに行ってしまう。
 何より、最大の肝であるラストシーンの処理の甘さが致命的。前振りとして台詞で何度も何度も説明していたにも関わらず、その異形性を観客のみが見えるどアップにすることでスポイルしてしまった。テンポも悪いしなあ。全然きゃーっとならないよ。もちろんCG……。


 もう少しいい形で映像化して欲しかったなあ。ちょっともったいない。さて、そろそろ他の作品は映像化されないかなあ。やっぱり『人造救世主』アニメ化……無理か!?

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

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<追記>
 mixiで作者ご本人からいただいたコメントによると、『ラブサイコ』でも短編「食性」「家に棲むもの」が映像化されてるそうだ。こちらもチェック!

ラブサイコ 狂惑のホラー [DVD]

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