『バレエ・メカニック』津原泰水

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

 SFマガジンに不定期連載されていた作品が、念願の単行本化(と言いながら、全然存在を知らなかったが……)。


 造形家・木根原の娘、理沙は、9年前に海辺で溺れ、昏睡状態に陥っていた。脳幹のみが辛うじて活動し続けている理沙は、脳死とさえも判定し切れない曖昧な状態にある。
 作品を理沙の医療費につぎ込みながら、やがて来る未来に怯えつつ生きていた木根原は、ある日、理沙の声を聴く。それを皮切りに、東京は不可思議な幻覚に襲われる……。


 最近、出す本出す本傑作、という感じの津原泰水だが、これも凄い。
 ビジュアル作り、小道具のセンスが光る第一章は、ややその美しさに走りすぎるかと思いきや、後の章にもつながる精緻な構成で伏線を張り巡らしながら、その情景の意味を一つ一つ解き明かして行く。「きみ」と二人称で呼ばれる主人公が、「彼女」の意思を悟った時、物語は密やかな優しさと共に幕を下ろす。この第一章の完成度がもう圧倒的で……。そこからさらにSF的解釈を盛り込んで展開させる第二章以降も無論素晴らしいのだが、幻想小説家としての作者の本領が遺憾なく発揮された第一章に号泣。うっうっ、感動じゃ! わしはもう一生ついていくぞ!

赤い竪琴 (創元推理文庫)

赤い竪琴 (創元推理文庫)


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