『鳥辺野にて』加門七海

鳥辺野にて (光文社文庫)

鳥辺野にて (光文社文庫)

 江戸時代を中心にした、十二編の怪奇小説集。


 んん〜、なんだこの面白さは……この作家はこんなに上手かったっけ? いや、光文社から出てる加門七海のホラー作品はどれも水準以上の出来、と評価していたが、これはその中でもトップ。
 癖のないシンプルな文章で、平易な昔話を語ってるようでいて、ぐいぐいと引き込まれる。日本各地の神仏や怪異にまつわる物語を収集して回ったエッセイ『うわさの神仏』などは大して感心しなかったのだが、それがこういう形で結実するとは……。


 強烈な作家性は感じないが、精緻な工芸品のような短編集。誰にでも薦められそうな本だ。

蠱 (集英社文庫)

蠱 (集英社文庫)