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”愛ゆえに殺した”『見えない目撃者』(ネタバレ)

映画


『見えない目撃者』予告編

 ルハン主演作?

 元警察候補生のシャオシンは、交通事故で弟を死なせ、自らも失明した過去を持っていた。警察学校への復帰を撥ね付けられ、帰宅する彼女はタクシーの運転手によって拉致されそうになる。車内で聞いた音を手掛かりに警察に犯人像を伝えるシャオシン。だが、彼女と矛盾する証言が登場し……。

 『20歳よ、もう一度』に続き、韓流スターのルハンが中国で活躍するシリーズ第二弾! が、今回も主役ではありません。主演はヤン・ミー。弟を死なせた過去を持つ盲目の女……。『恋の紫煙2』のすごい美人のスッチーじゃないか。今回はメイクも抑えめです。

chateaudif.hatenadiary.com
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 弟が良くて駆け出しミュージシャン、悪くすると場末で下手な音楽やってるボンクラに見えるオープニング。ライブハウスで歌い出したところ、姉ヤン・ミーがステージに乱入してぶん殴る。姉は警察学校の学生で、大学をさぼって音楽ばかりやってる弟を連れ戻しにきたのだ。柔道技でぶん投げ、「大事なライブなんだ!」という弟の手首を縛って車に乗せて走り出す。「私は警察官として不良を指導するの!」というのだが、まだ学生でしょ……。
 ライブハウスに戻してくれと懇願する弟、ブレーキを踏もうとしてアクセルを踏み込み、車が大暴走。高速の壁に激突してヤン・ミーは外へ吹っ飛んで頭を打って血だらけに。縛られたまま落ちそうな車に残った弟は「姉さん、助けて!」と絶叫するも、姉はあえなくダウン。車は真っ逆さま……。

 三年後、視力を失って久しいヤン・ミー、警察学校への復学を申し出るが、教官にあっさり却下される。「君が退学になったのは、視力のせいではない。弟に暴力行為をして死なせたからだ」とバッサリ。
 うーん……まったくの正論だね……姉貴ひどすぎだろ……。どうせ映画なんだから後から贖罪する展開になるんだろうが、いくらなんでもこれはダメ、と言いたくなるギリギリのところ。

 また、弟がまったく才能のないボンクラで無謀な夢に挑戦して学費も食いつぶし薬にも手を出して……ということなら、まあそれでも多少はわからないでもない、というかてっきりそんな設定だと思いきや、実は彼はすでにヒット曲もあるプロで、死んだとは言え3年経っても語り継がれてるほどの人気があったことが判明。バンドもボーカル変わって存続中。
 えーっ、前途洋々の弟を「音楽なんて不良」というただの偏見によって殺したわけか。これはひどすぎ。心を閉ざしたヤン・ミーを、お母さんが「三周年の追悼コンサートにいっしょに行って区切りをつけよう」と誘うのだが、この女をそのまま連れて行ったらファンに殺されるような気がするが……。

 失意の内にタクシーで帰ろうとするヤン・ミー。しかしそのタクシーを運転していたのは、巷間を騒がせる女子大生連続誘拐犯だったのであった。自分も誘拐されそうになるが、警察学校で覚えた関節技で反撃し、辛うじて逃げ延びる。警察に保護され、タクシーの特徴を事細かに話す。観察力と洞察力の鋭さを示し、取り調べの刑事も感嘆。一挙に犯人に迫るか……と思われたが、まったく矛盾する目撃証言が、近所を通りかかったローラースケート大好き少年ルハン君によってもたらされる。

 視覚障害者の意見が重んじられ、フラフラと遊んでいるルハンは褒賞金目当てだろうと相手にされない。ヤン・ミーも自分の意見に間違いはない、と頭ごなしに却下……するんだが、これはかつて弟を殺した過ちと同じことを繰り返しているのではないか、と気づく……。
 褒賞金の看板の前で「オレが正しいのにい!」と叫んでるルハンが犯人に目撃されるという強引すぎる展開によって、ヤン・ミーとルハンの両方が狙われるようになり、喧嘩しながらも協力するようになった二人は次第に信頼関係を深めていく。

 オリジナルの韓国映画は未見だが、今作は中国でのリメイクということで、力技の展開が多いな。さらに中盤は犯人によるローラースケート・ルハンと、盲導犬ヤン・ミーそれぞれへの追跡展開など、妙に凝ったアクションがあってそこは見所。
 ルハンは死んだ弟君のファンで、犯人が彼の曲の歌詞をSNSのアカウント名に使っていることに気づく、という展開も超強引だな!

 犯人はかつて妹を死なせた過去を持つ美容整形外科医。話の都合上、やたらと追いかけてきて、医者の割に体力あるな! さらに常にメスを携帯しているので、近接格闘で苦戦しても最後にはこれで逆転する。が、所詮は美容整形外科医なので、内臓の位置を把握しておらず刑事やルハン君に致命傷を与えられないのだ!
女子大生を誘拐し、地下室に監禁してはどうやらそのメスを使って切り刻んでいると思しき犯人。かつては白のワンピースが似合った妹が、出会い系アプリにハマってどんどん「ふしだら」になっていったのを口論の末に殺害してしまい、そのことによって出会い系とその利用客の女に執着するようになった……という設定。さあ、それが切り刻むことと何か関係が……というあたりは非常に面白く、なかなかにシュールであった。

 ルハン君を弟に重ねるようになったヤン・ミー。弟の練習場なども見せ、姉弟だったことを打ち明ける。これがなかなか立派な練習場で、すでに結構稼いでいたんじゃないのと思わせ、ますます姉の行為のひどさが……いや、もう何も言うまい……。ちなみにこの二人に恋愛要素はなしね。
 しかし、ついに追い詰められた犯人が刑事を倒してこの別荘にある練習場を急襲! クライマックスは大格闘戦に持ち込まれる。あちこち物を壊し、一進一退の攻防。犯人は、「私は妹を愛ゆえに殺した! 君もまた、弟をその愛ゆえに殺した同類だ!」と迫る。いや、エゴゆえに殺したという意味では確かに同類かもしれないね……。だが、ヤン・ミーは「私は貴方とは違う」と叫び、弟の形見のバイオリンを手に取る……。
 わざと挑発して犯人に接近させ、お母さんがくれた対物感知センサーで犯人の距離を感知し、バイオリンでカウンターパンチを喰らわせるという、この女、喧嘩強えなと思わせる大逆転!
 この「弟の形見のバイオリンで犯人を殴ってやっつけた」を「弟の形見壊して悪いことした!」と解釈するか「弟が助けてくれた!」と思うか、二種類の考え方があるとして、この作り手は絶対に後者だと思う。
どこかしらエゴが先走っているというか、自分に都合いい物の考え方をチラチラ感じるストーリー展開で、剛腕かつ珍作の香りが漂う。が、真の衝撃はさらに一年後に待ち受けていたのであった……。

 一年後、四周年記念の追悼コンサート。ついに母と共に訪れることができたヤン・ミー。献辞と共に、ギターの人がかつてのヒット曲を歌い出す……。会場には世話になった刑事さんも駆けつけていて、大団円ムード。あれっ、一人足りない人が……。
 ……と思ってたら二曲目、ステージから花火が噴き上がり、新ボーカルが登場……ルハンonステージ! 思わず「ファッ!?」となったね。この人、別に歌手でもなんでもなくて、1年前まではローラースケート大好きなただのファンやったやん! さらにステージ上にはつぎはぎして修理されたあのバイオリンが飾られていて……。

 うーむ、悪い意味で「終わり良ければすべて良し」を体現したようなお話であったね。警察学校復帰ではなく、onステージがラストになっちゃうあたりもルハン映画。オリジナルにルハンプラス新機軸を色々とぶち込んだ過程で曲がった背骨を、豪快に矯正したらこうなったような……。

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