”放任と束縛の向こうで”『ポリス・ストーリー レジェンド』
『ポリス・ストーリー』シリーズ?
妻の死以来、没交渉だった娘に呼び出され、ナイトクラブを訪れた刑事のジョン。クラブのオーナーであるウーを恋人として紹介する娘に腹を立てるジョンは、直後、何者かに殴り倒されて意識を失う。気がついた時、クラブは閉鎖され、警察に包囲されていた。首謀者であるウーはジョンの娘も人質にし、警察にある要求を突きつける……。
一口に『ポリス・ストーリー』と言っても『香港国際警察』とか『新ポリス・ストーリー』とか、まあ色々とあるわけで、今作も1〜3と続いたあのシリーズとは別に関係ありませんでした。
いつものジャッキー映画としては珍しく、冒頭の事件の現場になる街やバーの中をえらくしつこく映してるな、どうせすぐ移動するだろうに、と思っていたら、事件の舞台はそこを一歩も動かず! まさかの閉鎖状況サスペンスだったのでした。
ぐれてる娘がケバい化粧で登場し(考えてみれば父親役も初か……)、父ジャッキーに反抗するもいっしょに捕まって閉じ込められてしまう……って、なんか見たような話だな……と思ったら、まったく『ダイ・ハード4』じゃないですか。時期がちょうどクリスマスだったりするあたりも、まさに『ダイ・ハード』で、世界中をテンポ良く飛び回ってきたジャッキーの映画らしからぬ作りに驚きましたね。しかしバーの構内は、かつて工場だった建物を、パイプなどをインテリアとして残して改装した、という代物で、まさしくジャッキーアクションのための舞台設定!
まあしかし『ライジング・ドラゴン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130419/1366282712)でアクションは引退したので(一応)、ファイトシーンもパイプの間を潜り抜けて逃げ回るあたりも少なめ、あくまで人間ドラマをサスペンス仕立てで見せるぞ、というシリアスな作り。椅子に針金で縛り付けられて尋問されるジャッキーという構図を見ていると、どうしてとっとと抜け出して、椅子を振り回して大立ち回りしないのだ、と、見てるこっちがうずうずしてくるのはどうしようもないのだが……。
ジャッキーの頑固親父と、犯人役の頑固兄ちゃんの共通するパーソナリティが浮かび上がり、愛こそあったはずなのに、仕事にかまけて家族をないがしろにし、それでいて束縛ばかり強めてしまった悲しい姿が見えてくる。そんな彼らにやり直しは可能なのか、過去の自分を見つめ直すことができるのか。
事件の全体像が明らかになるに連れて、二人の男の心の葛藤が重なり、それはやがて自分自身に語りかけ、己を説得しようとするかのようなものになってくる。
ジャッキー演ずる主人公が、最初に犯人の正体がわからずに過去の捜査経験を映像付きで述懐するが、その回想がやがて自らの最悪の過去へと行き着くあたりが象徴的。でも、そこを乗り越えないと彼自身も、娘との関係の再生もないのだ……。
この動機でここまで大げさな事件を仕掛ける意味があるや否や、というと非常に怪しい、誘拐と籠城、警察とのタイムリミットつきの攻防など、小品の割りにがっちり詰め込んだお話で、ウエットな部分が先に立ちすぎるきらいもある。ジャッキーテイストを期待すると苦しいが、まあそれも含めての今であり、歴史の一部なのだ、ということで、やっぱりジャッキーファンは必見ですよ。あ、ユー・ロングァンも出てますからね! 仲良いんだろうなあ。
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