”あの頃に帰りたい”『20歳よ、もう一度』

 
 『怪しい彼女』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140727/1406389330)リメイク?


 大学教授の息子を持つモンジュンは、嫁には口うるさく息子と孫には甘かった。が、嫁がストレスで倒れたのをきっかけに、老人ホームに入れられてしまうことになる。失意で街を彷徨うモンジュンは、何気なく「青春写真館」という店に入り、遺影とするつもりで写真を撮ってもらう。だが、店を出た彼女はなぜか20歳に若返っており……。


 リメイク……と言うわけではなく、同じ企画を韓国と中国双方でほぼ同時に作っていた、というややこしい映画。こちらはヴィッキー・チャオが製作に加わり、その後継者的ポジションではないかと俺が勝手に言っている……出たっ! ヤン・ズーシャン! 『so young』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140410/1397120735)のあの女だっ! まったく恐ろしい、あの自分はかわいいから何をしても愛されると思ってる女よ……!


 まあ別の映画のことはさておき、ちゃんと達者な女優ではあるよね。もう二十代後半だが、普通に二十歳で通るし、歌も上手い。この人の個性に合わせたのか、韓国版とは結構違う方向性になっている。主人公のおばあちゃん時代や、その使用人だったおじいさん、家のお嫁さんなど、全員ビジュアルが上品になっていて、かなりアクの強さが薄れている印象。
 上映時間はほとんど変わらず、話の筋もほぼ同じなのだが、ムード重視で演出され、細かいギャグや下ネタは激減。不条理コメディの要素はぐっと薄くなって、ファンタジックな物語になっている印象。過剰さのつるべ打ちから意味のあるものを浮かび上がらせていく韓国版と違い、かなりブラッシュアップされている。
 が、やっぱりオモシロ要素を省いただけのようにも思え、方向性の違いとだけとも言い切れない物足りなさも残る。同じ話、似たような上映時間で、セリフ量が激減しているというのは、何か不思議だ。同時に映してみたら色々と発見がありそうだな……。


 ヤン・ズーシャン、婆さん時代が「お嬢さん」設定に引っ張られて割と上品な感じの人になっているので、若返った後でも、いかにも愛されて当然と思ってそうな……って、またかよ! まあこれがこの人のハマり役なんであろうな。どことなく嫌味な感じが残っているあたりも良い。
 歌もやってて、劇中、最初に歌うシーンで、テレサ・テンの「つぐない」(もちろん中国語版ですよ)を歌うシーンは度肝を抜かれるぐらいに良かった。が、その後のオリジナルの歌は総じて印象に残らず……。結論としては、テレサ・テン最強ということですよ。
 回想シーンで、乳飲み子を抱えて働いているシーンがあり、そこでは全然メイクをしていないんだが、わっ、目細い!と思っちゃったね。実に正しく中国系のお顔で、あれが素顔なのか。普段はどんだけパッチリ目のメイクをしているんだ……。


 路線こそ変わっているが、まあ元の物語がやっぱりよくできているので、十分に面白い。チェン・ボーリンのプロデューサー役も、興味ないオーディションで爆睡してるシーンなど良かったし。……が、まあまあ好印象だったのが、突然ラスト付近で腰砕けになる。最後の輸血のシーンが終わっておばあさんに戻り、孫たちのライブを観戦……テレビで! えっ、生じゃないの? 当然、家にいるんだからプロデューサーとのニアミスもなく、もらった髪留めで「あれっ?」となるシーンもなし。
 で、コメディ色もないから、最後にジイさんが若返ってくる超くだらない(褒めてる)ラストもばっさりカット。おかげで余韻がないのを通り越して、撮影日数が足りなくなったのを、やっつけで編集したようなラストになっているんだが……。


 とにかく最後の方で印象が急落したなあ。惜しい。

テレサ・テン ベスト・オブ・ベスト 時の流れに身をまかせ EJS-6080

テレサ・テン ベスト・オブ・ベスト 時の流れに身をまかせ EJS-6080