"語られざる事件"『死霊館』(ネタバレあり)


 ジェームズ・ワン監督作。


 心霊学者のウォーレン夫妻が、密かに封印してきた語られざる事件……。1971年、ある館に引っ越してきた夫婦と五人の娘たち、その間に起こった恐怖体験。幾多の事件を解決してきたウォーレン夫妻も、その只ならぬ出来事に、自らの生死を賭けた最大の戦いを決意することとなる。そして、呪われた館の秘密と、そこに巣食う魔女の存在が明らかに……。


 誰がデザインしたか、顔が凶悪過ぎる人形が暴れるオープニングで基本設定を説明。さらに「実話!」、主人公たちも今まで口を閉ざし続けてきた「最も邪悪な事件!」と散々煽りまくる。
 全然、設定を知らずに行ったので(そもそも実話と言われても信じてないが……)、この主人公たちがどうなったのかは知らず。しかし、この霊媒夫婦、夫役でいかにも田舎のイケメンだよね、とひどいことを言われがちな、『ハードキャンディ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101130/1291088550)でエレン・ペイジに金玉を切られそうになっていたパトリック・ウィルソンが『インシディアス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110904/1315064133)に続いての主演。うわあ、頼りねえ……。こりゃもうほんとに霊能力持ってる嫁のヴェラ・ファーミガ頼りだな、というのがありありなんですが、『マイレージ、マイライフ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100410/1270894476)みたいに肝心なとこで裏切りそう……なんではなくて、彼女の方も「これが最後の戦いになる……」と作中でガンガン死亡フラグを立てまくるのである。そうは言っても、ローズ・バーンよりは全然強そうですがね!
 そんなこんなで、どうも苦しいんじゃないか、実話と聞いて安心してたら、どん底エンディングあるんじゃないか、と自然と心配になってくるのである。


 今時のホラーらしくなく、標的の家族が狙われるあたりは「見せない」演出を徹底していて、出そうで出ないを結構繰り返してくる。物が落ちるとか、見えない手に引っ張られるとか、ベタではあるもののきっちりやったらわりとはらはらするのだよな。悪魔さんの直接のターゲットになるのがおばさんというところも、何だか新鮮でもある。設定にもちゃんと合致しているし、『ポゼッション』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130611/1370941723)の、悪魔払いにかこつけて女児をいたぶりまくりたい、あられもない格好をさせたいという願望がひしひしと迫ってくるようなあれは、やはりパスである。


 真相部分も理詰めで用意していて、クライマックスへの雪崩れ込み方も、話の先を絞らせず読ませない演出がなかなか上手い。昨年の『ウーマン・イン・ブラック』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121207/1354786312)と似た印象で、原作ありのあちらと近いクラシックな風味が良いですな。


 しかしながら、前作『インシディアス』を全然評価していないような事を書いておいてなんですけど、ここまで普通に端正にやられると、なんかもっと珍な、おいおい無理があるよそれ、というような奇天烈な要素がないと、逆に物足りない気持ちになってしまうのがワガママなところである。すいません! 『デッド・サイレンス』あたりのバランスがやはり一番好きであったな。


<ここからネタバレ>

 「最も邪悪な事件」と言ってた割には脇役に至るまで誰も死なずに終わるあたり、逆に意表を突かれたね。『フッテージ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130626/1372240785)と似たシーンもあったりしただけに、ちょっとギャップがあったな。あんだけ死亡フラグを立てていた人も無事だし……これはこれでたまにはいいかもですが、物足りない気がしないでもないのでした。

インシディアス [Blu-ray]

インシディアス [Blu-ray]