"迷宮のとば口"『デビルズ・バックボーン』

デビルズ・バックボーン [DVD]

デビルズ・バックボーン [DVD]

 ギレルモ・デル・トロ監督作。DVDで鑑賞。


 内戦下のスペイン。両親を失った12歳の少年カルロスは、サンタ・ルチア孤児院に預けられる。彼の与えられた12番のベッドは、かつてサンティという少年が使っていたものだった。最初の夜から出没する少年の幽霊はサンティなのか? 彼はどこへ消えたのか? 一方、義足の女院長は老教師と共に、ひそかに内戦に対して援助を行っていたが、その資金である金を、密かに管理人のハシントが狙っていた……。


 『ミミック』と『ブレイド2』の間にスペインで撮った作品。内戦時代のスペインの孤児院という閉ざされたロケーション。そこに少年の幽霊が出没するのだが、最初からあまり「怖がらせよう!」という意図で演出されておらず、その幽霊も全身がはっきり映されたりして、ハッタリが効いていない。ストーリーが進めばその意図も段々と明らかになるのだが、ちょっとフェアに作りすぎたか? もう少し煽ってもよかったのではないかと思う。


 主人公は男の子ばかりの孤児院の新入りで、最初は疎外されいじめにも合うのだが、割合気のいい連中が揃っていて、じきに仲良くなってしまう。行き場のない広くもない孤児院なのだが、男の子たちが所狭しと駆け回るところには躍動感があり、スペインのじっとりと湿った空気感の中ながら、「十五少年漂流記」や『グーニーズ』のような楽しさがある。
 対照的に大人の側の人間関係がドロドロとしていて、内戦下の状況と絡めてそれらはやがて破滅へと突っ走っていく。子供達はいい巻き添えだ。幽霊譚自体がさほど昔ではなく、つい最近のことなので、謎解き要素もその分薄く、後半はむしろ子供達が活躍する活劇的な面白さの方が先立つ。これは少し意外というか、ホラー要素の味付けの加減を少々見誤ったと言っていいだろうか。


 ただ、これがなければ傑作『パンズ・ラビリンス』も、プロデュース作品『永遠のこどもたち』もなかったであろう、という要素は散見される。子供の描き方や、幽霊の肌触り、ファンタジックな要素と現実的なシビアさのバランスなど、共通点も多い。ファンには重要な一本。

パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]

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永遠のこどもたち [DVD]

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